音楽の都ウィーンから彗星の如く登場した弦楽デュオ
オーストリアの首都ウィーンは、モーツァルトやベートーヴェンなど多くの作曲家が活躍した“音楽の都”だ。今日紹介するデュオ、バルトロメイビットマン(BartolomeyBittmann)の二人も、そんなクラシック音楽の中心地で育ってきた。チェロのマティアス・バルトロメイ(Matthias Bartolomey, 1985年 -)の一族は、120年にわたり代々ウィーン・フィルハーモニーに仕えてきたという名家の出身。一方のヴァイオリン&マンドーラ奏者のクレメンス・ビットマン(Klemens Bittmann, 1977年 – )はジャズや民族音楽を中心に演奏活動を行ってきた。
そんな二人がクラシカルな楽器を用いながらも、その伝統を打ち破り、革新的な音楽を探求しようとするプロジェクトがこのデュオ、BartolomeyBittmann である。
ヨーロッパジャズの名門レーベルACTからの新作
BartolomeyBittmann の3rdアルバムとなる『Dynamo』が、ヨーロッパの現在進行形のジャズを数多くリリースする気鋭のレーベル、ACTからリリースされた。
今作でも限りなく自由な彼らの創造力と、舌を巻くしかない抜群の演奏力が音楽の新たな次元を提示している。
このアルバムでバルトロメイとビットマンの二人は、それぞれの楽器のあらゆる奏法を駆使し、時にはシャウトにも似たヴォーカルも用いて彼らにしか表現できない音楽を懸命に奏でている。とにかく手数が多いことにまず驚かされるが、すべて二人の作曲によるオリジナル曲で占められた作品群からは、単にテクニックを誇示するだけではなく、チェロやヴァイオリン、あるいはマンドーラという楽器で極限まで“何ができるか”を追求する姿勢が感じられる。
バルトロメイビットマン(BartolomeyBittmann)の音楽をポスト・クラシカルと言ってしまうと凡庸だが、何世紀もの間“伝統”に縛られてきたクラシック音楽の枠組みの中で蓄積されていった莫大なエネルギーを解放した先が、メタルやロック、プログレやジャズだったという構図も面白い。彼らのテクニックは間違いなくアカデミックなクラシック音楽の中で培われたものだが、その表現形がまるでクラシックとは似つかない異形のサウンドなのだ。
近年SNSなどでも話題のトラディショナルな楽器をフィーチュアした2人組のアコースティックバンドといえば「2 Cellos」や「Rodrigo y Gabriela」なども人気だが、音楽の都ウィーンから現れたこの二人にも注目したい。