日本の楽器人口は「10%」
楽器を演奏することは脳に非常に良い影響を与え、生活を豊かにすると言われています。
全国楽器協会の調査によると、日本で楽器演奏を趣味にしている人の割合は約10%ほど。
年代別にみると10代の頃は25〜30%もあるので、社会人になり時間がなくなって楽器をやめた、という人は多そうです。
現在楽器演奏を趣味としている人の割合=10%を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、別の調査ではこんな結果も出ています。
9割弱もの男性が「これから楽器を演奏したい」。50代では92.5%にも。
http://www.iid.co.jp/news/report/2013/0924.html
これは以前に楽器の経験があって現在は楽器をやっていない人が対象の調査ですが、なんと9割もの人が楽器演奏への関心を示しているようです。
にも関わらず、前述のように結果として楽器人口が10%程度なのは、やはり楽器に対する心理的な“ハードルの高さ”(上達するまで時間がかかりそう、楽譜など覚えることが多い、お金がかかる、住宅事情etc…)があるように思います。
それでも楽器を演奏してみたい、と多くの人が思うのは音楽の楽しさ、楽器演奏の気持ち良さを知っているからこそ。もしかしたら好きな歌手やアーティストへの憧れもあるかもしれません。
一番人気はピアノやギターのようですが、それらよりは少しハードルを下げつつも、やってみればその面白さが分かる楽器があります。
それがパーカッション。つまり、打楽器ですね。
※「パーカッション」は本来は打楽器全般を指しますが、一般的にはドラムセット以外の打楽器をまとめて「パーカッション」と表現されています。
楽器を始めたい人におすすめなのが「パーカッション」
パーカッションと聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。
日本の大衆音楽(J-POPなど)ではあまりパーカッション奏者は登場しないため、身近に思い浮かべることができないかもしれません。パーカッションは脇役のイメージでしょうか。もしかしたらパーカッショニスト(打楽器奏者)なんて、“別にいてもいなくてもいい存在”なんて思われているかも…。
そんな方に向けて、今回はパーカッションの面白さを少しでも伝えられるよう、世界中のとにかく、かっこいいパーカッションを案内したいと思います。
パーカッションの魅力は、他の楽器とのアンサンブルをしやすいこと。
アンサンブルにおいて、ピアノやギターのように音程を持つ楽器の場合はリズムの他に音程や和音をしっかり合わせる必要がありますが、パーカッション(音程を持つ一部の楽器を除く)の場合はリズムだけ意識すればまず大丈夫。曲を知らなくてもアンサンブルにすぐに参加できる点は大きな魅力です。
中には習得がとても難しいものもありますが、多様なパーカッションを経験(かじっただけ、とも言う)した私が特におすすめしたい楽器を完全なる主観でつけた難易度別とともに紹介したいと思います。
① 多くのジャンルで活躍!『シェイカー』 難易度★☆☆
筒状、あるいは球形の容器の中に固い粒を入れて、振ることで音を出すパーカッションです。適当に振っても誰でも音を出せますが、リズムに合わせた正しい振り方を覚えれば皆から一目置かれるはず。2週間も練習すればある程度習得できる上に、多くのジャンルの音楽に通用します。
基本は1拍の中の1,4にアクセントをつける振り方です。
好きな位置でアクセントをつけられるようになると、シェイカーひとつで驚くほどグルーヴィーな演奏が可能になります。
② 意外と難しい!?『トライアングル』 難易度★☆☆
トライアングルは幼稚園や小学校で多くの方が触ったことがある楽器ではないでしょうか。
これも舐められがちな楽器ですが、正しい持ち方や叩き方を覚えればかっこいい演奏ができます。
トライアングルは、ブラジルの「フォホー(Forró)」と呼ばれる大衆音楽のジャンルでは必須のパート。フォホーのバンドにはほぼ必ず、大型のトライアングルを叩く専門の奏者がいるほどです。
③ 秘密の箱『カホン』 難易度★★☆
最近では見かけることも多くなった箱型の楽器です。多くの楽器屋さんでも普通に扱っていたりしますよね。
カホン(Cajón)はペルー発祥の打楽器ですが、1970年代に南米をツアーした著名なフラメンコ・ギタリストであるパコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)がスペインに持ち帰り、フラメンコの伴奏に取り入れたことで世界的に知られるようになりました。
カホンの内側には響線(スナッピー)が貼られていることが多く、叩く場所や叩き方で低音から高音まで様々な音色を出せることから、近年ではドラムセットの代わりに用いられることも多くなっています。
④ 体踊るアフロ・グルーヴ『ジャンベ』 難易度★★☆
ジャンベは西アフリカ起源の打楽器ですが、日本でも非常に演奏人口が多く、コミュニティーも充実しています。初心者でもちょっとしたコツを掴むことで、太鼓らしい抜けるような気持ちの良い音を出せ、ハマる人も多いようです。
楽器屋さんでの取り扱いも多く、入手も容易ですが、安価で雑なつくりの楽器はいい音がしないのであまりオススメはできません。
様々な種類のジャンベが出回っており、それぞれ音色の個性も全く違うので、実際に叩いてみて気に入った楽器を買うことをおすすめします。
⑤ ただの壺じゃない!『ウドゥ・ドラム』 難易度★★☆
初めて見るとただの壺にしか見えませんが、これもれっきとした楽器。「ウドゥ(ウドゥ・ドラム)」というナイジェリアのイボ族発祥の楽器で、その特徴的な外見や、深みのある豊かな音色で世界中で愛されています。ウドゥという名はイボ族の言葉でそのまま「壺」の意味なのだそう。
壺の側面には穴があいており、ここを手のひらで塞ぐように叩くと不思議な感じの低音を出せます。壺の側面を叩いたときの甲高い音とあわせ、多彩なリズムを叩き出すことが可能です。
本格的な陶器製のウドゥは、もちろん落とすと割れてしまいます。
⑥ 小さなドラムセット『パンデイロ』 難易度★★★
皮ヘッドのタンバリンのような見た目ですが、構造上全く別物の楽器です。
ブラジルを代表するパーカッションで、サンバやショーロといったブラジル音楽に欠かすことのできない楽器で、非常に多彩な音色が魅力です。
バスドラムのような低音から、抜けの良い高音の打撃音、さらにはジングル(金属円盤)の音をうまく組み合わせることでドラムセットのような表現も可能なほど。
ヘッド(皮の部分)の音高を調節することができ、近年は低音をより強調できるような低めのチューニングが流行しています。
見た目と裏腹にすごいグルーヴを生み出すため、多くの方に興味を持たれる楽器ですが、始める場合はできるだけ軽い楽器を選びましょう。重い楽器だと持つ方の手首がすぐに死にます。プラスチックヘッドのものより、皮ヘッドのものが軽く表現力にも優れており、おすすめです(湿度管理は大変ですが…)。
⑦ 究極の打楽器『タブラ』 難易度★★★★★★★
北インドの伝統的な打楽器。「タブラ」というと、一般には「タブラ」「バヤ」と呼ばれる2つの太鼓のセットを指します。
インド音楽ではポピュラーな楽器ですが、“世界一難しい打楽器”とも言われており、習得には数十年を要するとも言われます。音の組み合わせはなんと20種類以上!
太鼓の打面の真ん中にある黒い部分(スヤヒ)は鉄と米粉でできており、これが皮に重みを与え倍音成分の多いタブラ独特の音色を生み出しているようです。左手の手の平で皮の張力を変えることによって低音の音程を変化させる奏法も特徴的です。
この楽器で叩くことができる音は「Na」「Tun」「Dha」と口で発音することができ、そうやって師匠から弟子へと、何百年も口頭継承されてきました。声でタブラ演奏を表現することを「ボル」(口タブラ)と呼び、実際にタブラを叩けずとも、ボルを自身の音楽表現の中に取り入れているミュージシャンは世界中に多数います。
はっきり言って、初心者に扱うことは難しい楽器で、独学ではまずチューニングの時点で躓きます。覚悟があるならインドに修行に出るのが良いでしょう。
手軽に始められるパーカッション。皆さんもいかが?
今回挙げた多くのパーカッションは、ちょっと調べればレッスン動画などもあり、楽器自体も比較的入手がしやすいものばかりです。
音楽をやってみたい、でも楽譜は読めないしピアノやギターはハードルが高い…そんな人は、パーカッションで音楽の面白さやリズムを刻む楽しさを味わってみてはいかがでしょうか。