現代ブラジル・ギター界最高峰、ルイス・レイチによる美しすぎる傑作『Vento Sul』

Luis Leite - Vento Sul

ブラジル最強のギタリストが素敵な音楽家たちと創り上げた傑作

強者ひしめくブラジルのギター界において、ルイス・レイチ(Luis Leite)の才能は間違いなく最高峰だ。それなのに日本での知名度はイマイチで、あまり話題にのぼることがない。今回はそんな不遇のギタリストが、現代のブラジル音楽界の最高の仲間たちと創り上げた2017年の傑作『Vento Sul』を紹介したい。タイトルは、「南の風」の意味だ。

アルバム全編でルイス・レイチはガットギターを演奏。タチアナ・パーハ(Tatiana Parra)、フェリピ・コンチネンチーノ(Felipe Continentino)、セルジオ・クラコウスキ(Sergio Krakowski)などなど、現在進行形のブラジル音楽を担うアーティストたちをゲストに迎え、珠玉の音楽を奏でている。

アルバムの冒頭に収録されているエリカ・ヒベイロとのデュオ「Santiago」。

ルイス・レイチのギターは基礎にあるクラシックの確かなテクニックに乗じて、ジャズやブラジル伝統のショーロなどのエッセンスが加わり、ガットギターの温かい弦の響きが最大限に活かされた至上の音楽に思える。

収録された全10曲は全てルイス・レイチの作曲によるオリジナル。
(2)、(6)でのタチアナ・パーハ(Tatiana Parra)、(4)のリヴィア・ネストロフスキ(Lívia Nestrovski) といった歌姫たちの飾らないスキャットも最高に素敵だし、(3)でのジュリアーノ・ホーザス(Giuliano Rosas)のクラリネットなど、曲ごとに異なるゲストを迎えながら、全体的に室内楽的な心地良い統一感で仕上げたセンスも素晴らしい。

ギター独奏での(3)「Flor de Noite」。
アルバムではクラリネットのジュリアーノ・ホーザスとの共演を聴くことができる曲だ。

ブラジル音楽界きってのエリート・ギタリスト

ルイス・レイチは1979年、リオデジャネイロ出身のギタリスト/作曲家。ギター演奏が大好きな祖父がいる家庭に育った彼は、幼い頃からジャズやクラシック、ショーロなど様々なスタイルのギターに興味をもち、14歳の頃には既にプロとしての活動を開始していた。
イタリアのキジアーナ音楽院で学んだあと、ウィーンに10年間居住。著名なクラシックギタリスト、アルバロ・ピエリ(Alvaro Pierri)に師事、ウィーン音楽大学にて学士号と博士号を取得している。

ブラジルに戻ったあとはギタリストとしてこれまでに3枚のアルバムを発表。アミルトン・ジ・オランダ(Hamilton De Holanda)やヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)といったビッグネームとの共演したり、若いギタリストたちの指導育成も行っているようだ。

私が初めて聴いたルイス・レイチの演奏は、このギンガ(Guinga)の名曲「Di Menor」だった。
YouTubeにはこの曲のカヴァーを披露しているギタリストは数多くいるが、ルイス・レイチのそれは群を抜いていた。

ギタリストとしてブラジル随一の圧倒的なテクニックと音楽性を持つルイス・レイチ。
来日公演の実現が待ち望まれるアーティストだ。

ブラジルを代表する歌手、モニカ・サウマーゾ(Mônica Salmaso)との演奏。
サイモン&ガーファンクルで有名な「スカボロー・フェア(Scarborough Fair)」のギター独奏。
クラシック・ギタリストの憧れ、バリオスの「La Catedral(大聖堂)」をジャジーに。
パンデイロのセルジオ・クラコウスキとの共演。
Luis Leite - Vento Sul
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