チリ出身、注目の女性テナーサックス奏者メリッサ・アルダナ
南米チリ出身の新鋭サックス奏者、メリッサ・アルダナ(Melissa Aldana)が現代NYジャズの俊英たちを率いて録音したアルバム『Visions』。メキシコの画家、フリーダ・カーロの人生にインスパイアされた硬派なジャズアルバムだ。
ピアノにサム・ハリス(Sam Harris)などニューヨークの俊英たちを率い、カルテットで演奏される。また、注目の若手ヴィブラフォン奏者、ジョエル・ロス(Joel Ross)が4曲でゲスト参加している。
収録曲はすべて彼女のオリジナル曲。硬質なソングライティングと即興性の高い構成で、ジャズアーティストとしてのプライドが伺える。現代ジャズらしい複雑な構造の楽曲に乗せ彼女が吹く速いパッセージも見事だし、それに呼応するバンドメンバーも素晴らしい(それにやはり、4曲しか参加していないもののジョエル・ロスのヴィブラフォンの圧倒的な存在感といったら…!)。
本作収録の(6)「Elsewhere」が2020年1月に発表予定の第62回グラミー賞ジャズ即興賞にノミネートされているのも頷ける、素晴らしいジャズ作品だ。
サックス一家に育ち、セロニアス・モンク国際ジャズコンペで悲願の優勝も
メリッサ・アルダナはチリの首都サンティアゴに1988年に生まれたテナーサックス奏者。同じくプロのサックス奏者の父マルコス・アルダナ(Marcos Aldana)の指導のもと、6歳からサックスを始めている。当初はアルトサックスを吹いていたが、ジャズの巨人ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の演奏を聴いて衝撃を受けテナー──この楽器は、祖父エンリケ(Enrique)のものだった──に乗り換えたようだ。
十代の前半からジャズクラブでの演奏を始め、のちに米国ボストンのバークリー音楽大学に籍を置く。卒業後はそのまま米国NYで活動を行っており、2013年にはかつて父親が準決勝まで進出したセロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティションにて、南米出身の女性ミュージシャンとしては初となる最優秀賞受賞という快挙を遂げている。