より洗練されたフラメンコ×インド古典音楽
インドの古典音楽とスペインのフラメンコを見事に融合したデビューアルバム『Indialucia』(2005年)が世界的に話題となった音楽集団、インディアルシア(Indialucia)が、2014年に満を持して発表した2作目『Acatao』は、前作でのフラメンコ×インド音楽をより洗練させた非常に完成度の高い作品だ。
フラメンコとインド古典音楽、さらにはジャズという地理的に離れた音楽文化が一つに溶け込むこのサウンドは、“ワールドミュージック”と呼ばれる分野でも最高峰のものだろう。前代未聞のユニークなサウンドにぜひ耳を傾けてもらいたい。
ポーランドのフラメンコギタリスト、ミゲル・チャコウスキ(Miguel Czachowski)を中心に結成されたIndialuciaだが、デビュー作から10年の時を経て発表された本作『Acatao』はインドとスペインで2010年〜2013年にかけて録音されており、イベリアジプシーの古い言葉で「団結」を表すタイトル通りに、ポーランドを代表するジャズピアニスト、レシェク・モジジェル(Leszek Możdżer)を始め、インド、スペイン、ポーランドなどから多彩な音楽家たちがゲスト参加している。
フラメンコのルーツ、北インド音楽への回帰
スペインの伝統芸能であるフラメンコは、北インドを起源として西に流れてきたヒターノ(ロマ=ジプシー)によってスペイン最南部のアンダルシア地方で発生したと言われている。インド音楽がロマによって西に伝わる過程でアラブやユダヤ文化の影響も受け、最後にアンダルシア地方の音楽と混ざって生まれたものだろう。
そのせいか、Indialuciaで見られるようにインド古典音楽との相性はとてもよく、両者は地理的な距離をほとんど感じさせず違和感なく溶け込んでいる。ヨーロッパの西の端まで辿り着いたロマの音楽が、何世紀も経てついに北インドへと帰ったのだ。
Indialuciaというプロジェクトには、そんな新鮮な驚きがある。
インド音楽に傾倒したフラメンコギタリスト、ミゲル・チャコウスキ
Indialuciaの主宰者、ミゲル・チャコウスキ(Miguel Czachowski, ポーランド語:ミハウ・チャコウスキ, Michał Czachowski)は1974年ポーランド生まれのギタリスト/作曲家/プロデューサー。フラメンコ愛好家の家族のもとに生まれ育った彼は12歳からギターを始め、1992年に最初のグループ「Viva Flamenco!」を結成。当時よりフラメンコにインド音楽やジャズを持ち込んだ独自の音楽を演奏していた。
1998年にインド中西部のナーグプルの音楽学校(Nagpur Music Academy)でフラメンコギター の講師を務めるためにインドに招聘され、そこで彼はのちにIndialuciaで演奏を共にすることになるシタール奏者アヴァネンドラ・シェオリカール(Avaneendra Sheolikar)の指導のもとシタールの演奏やインド音楽を学んだ。
フラメンコとインド音楽に魅了された彼は、ジプシー(ロマ)音楽のルーツに立ち返り、フラメンコとインド音楽の両方のスタイルの融合した作品『Indialucia』をナーグプル音楽アカデミーの教師と生徒たちと共に創りあげた。
同作はフラメンコのルーツへの回帰として世界中で高く評価され、ポーランドのフォーク音楽コンテスト、Wirtualne Gesleで2005年のベストアルバム賞を受賞。さらに米ビルボード誌のワールドミュージック部門でも2位にランキングされた。
その後、ミゲル率いるIndialuciaは5大陸で300を超えるコンサートを行い、フラメンコとインド音楽という斬新なプロジェクトは大きな成果を収めた。
2019年10月、ミゲル・チャコウスキは欧州芸術連合(EUA)による「芸術および文化活動に対するヨーロッパ賞」も受賞している。
Indialucia – Acatao :
Michał Czachowski – flamenco guitars, saz, nudillos, palmas
Avaneendra Sheolikar – sitar
Purbayan Chaterjee – sitar
Sandesh Popatkar – tabla
Giridhar Udupa – ghatam, riqq, duff, tabla, percussions
Leszek Możdżer – piano
Jorge Pardo – flute
Paquito González – cajón, tabla, caxixi, percussion
Kavita Krishnamurti – vocal
Ambi Subramaniam – violin
Monica Mata – vocal
Mohammad Rasouli – ney
Maciej Garbowski – double bass
Jayachandra Rao – mridangam
Ravichandra Kulur – kanjira
Blas Córdoba – vocal
Anandita Basu – vocal
Ignacio Fernández – flamenco & acoustic guitar
Sagar Jarel – dholak
Macarena de la Torre – vocal
Isaac Pêna – nudillos, cajón
Hassan Samii – dholak
Magda Navarrete – zapateado
Alberto Naranja – bass guitar
Michał Żak – bansuri
AUKSO – Orkiestra Kameralna Miasta Tychy pod dyrekcją Marka Mosia