心に滲み入る…。S.ジョブズに魅入られたSSW、ヤエル・ナイム新譜『Nightsongs』

Yael Naim - nightsongs

心に滲み入るヤエル・ナイム新譜

2008年にApple社のMacbook AirのCM曲に起用され、一躍世界中で人気となったフランス生まれ、イスラエル育ちのSSWヤエル・ナイム(Yael Naim)の新譜『Nightsongs』はその名の通り静かな夜にぴったりのアルバムだ。

2016年作『Older』から実に4年振り、ファンにとっては待ち詫びた新譜だが、驚くことに今作にはドラムスやパーカッションといった打楽器の類の音が一切入っていない。聴こえてくるのはピアノやアコースティック・ギター、空間的なシンセサイザーなど。ごく少数の楽器で丁寧に作り込まれたサウンドに乗る彼女の囁くような歌や多重録音によるコーラスもとても静謐に響く。

ほとんどが英語、一部はフランス語で歌われる歌は優しく寄り添うようでもあり、生きる中で多くの人が感じるであろう言葉にできない孤独や悲しみを代弁するようでもある。
世界中の人々が孤立するこのご時世に、ヤエル・ナイムの音楽は多くの人を救ってくれるかもしれない。皆、同じ苦しみを感じているのだと…。

(5)「Shine」のMV。
(1)「Daddy」のスタジオライヴ演奏。

スティーヴ・ジョブズに魅入られた存在

ヤエル・ナイム(Yael Naim, יעלנעים)は1978年、フランス・パリ生まれ。
両親はチュニジア人のユダヤ教徒。4歳の時に家族とともにイスラエルに移住し、引越先にピアノがあったことがきっかけとなりクラシックピアノを習い始めた。10代の頃には今でも彼女の音楽性に大きな影響が感じられるビートルズやジョニ・ミッチェルに傾倒した。

2004年に出会ったプロデューサーのダビード・ドナティエン(David Donatien)は、それまでクラシックやフォークが全てだった彼女の音楽の世界にジャズやロックを持ち込んだ。これが転機となり、新しい音楽の模索を始めた彼女は2007年に自身の名を冠した2ndアルバム『Yael Naim』を発表。
ここに収録された「New Soul」という曲が米Apple社CEO(当時)スティーヴ・ジョブズ(Steve Jobs, 1955年 – 2011年)の目に留まり、Apple社が満を辞して発表した超薄型のノートパソコン「Macbook Air」のCMに採用され、“封筒に入る激薄ノートパソコン”の衝撃的なイメージとともに話題となり一躍世界中でその名を知られることになる。
このCMの効果は絶大で、ヤエル・ナイムは米国のiTunesのチャートでベスト10に初めて入ったイスラエルのアーティストになった。

彼女は2011年と2016年の2度にわたり、フランスのグラミー賞に相当するVictoires de la Musiqueで女性アーティスト・オブ・ザ・イヤー賞を受賞している。

AppleのMacbook AirのCMに採用されたヤエル・ナイムの楽曲「New Soul」。
この曲を選んだのは当時Apple社のCEOだったスティーヴ・ジョブズ自身だったという。
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