親友の死のトラウマを乗り越えたサンダーキャット新譜『It Is What It Is』

Thundercat - It Is What It Is

サンダーキャット、注目の新譜『It Is What It Is』

前作『Drunk』(2017年)が大ヒットしたベーシスト/作曲家/シンガー、サンダーキャット(Thundercat)の待望の新譜『It Is What It Is』がリリースされた。サンダーキャットとフライング・ロータスの共同プロデュースで全15曲収録だが、これまでの彼のアルバムの傾向通り、楽曲はどれも短くあっという間の38分間だ。

アルバムにはKNOWERのドラマー、ルイス・コール(Luis Cole)や、ジ・インターネット(The Internet)のギタリスト、スティーヴ・レイシー(Steve Lacy)、元スレイヴ(Slave)のスティーヴ・アーリントン(Steve Arrington) 、さらにはチャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino, 本名はドナルド・グローヴァー、俳優)、カマシ・ワシントン(Kamasi Washington)ら超豪華ゲストも参加。
ファンクやジャズ基調のサウンドと、サンダーキャットのファルセット・ヴォイス、そしてやはり超絶技巧のうねるベースが全編を通して気持ちいい。間違いなく今年度の音楽シーンにおいて最注目作品のひとつだろう。

親友の死を乗り越え、アルコールも断ち切ったサンダーキャットの再出発

彼にとってトラウマとなる出来事を経て制作された今作のテーマはシリアスだが、サンダーキャットはこれまでのように楽天的でユーモラスな心も失っていない。

“俺のドラゴンボール柄のデューラグをどう思う?”と問いかける、なんとも言えない味わいのある(9)「Dragonball Durag」は現代のクラシック・ソウルともいうべき名曲(迷曲?)だ。サンダーキャットは相当なドラゴンボール・マニアとして知られており、サイヤ人や餃子(チャオズ)のコスプレをしてステージに立つという奇行(?)も目撃されている。

全身ドラゴンボールなサンダーキャットが眩しい、(9)「Dragonball Durag」のMV。
一見ホームビデオのような雑さだが、ハイム(Haim)の三姉妹が登場してたりする。

「そういうものさ」「しょうがないね」といった意味を持つ表題曲(15)「It Is What It Is」にはブラジル出身のギタリスト、ペドロ・マルチンス(Pedro Martins)も参加。2018年に薬物の過剰摂取で死去した親友のラッパー、マック・ミラー(Mac Miller)を失った後の人生の変化について歌う5分超の大作になっている。この出来事によってサンダーキャットは(前作のテーマでもあった)大好きだったアルコールを辞め、体型も随分とスリムになった。

(4)「Black Qualls」のライヴ演奏。
スティーヴ・アーリントン(vo)、スティーヴ・レイシー(gt, vo)、フライング・ロータス(key)との共演。

サンダーキャットは4月に予定されていた来日公演も猛威を振るうCOVID-19の影響で2021年1月に延期に。なかなか現実を受け止めることが難しい世の中だが、“It is what it is.”の精神で前向きな気持ちで生きていくことが大切だ。

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