マリウス・ネセットと挾間美帆指揮“デンマーク・ラジオ・ビッグバンド”共演作
ノルウェー出身のサックス奏者、マリウス・ネセット(Marius Neset)と、日本が誇るジャズバンド指揮者の挾間美帆(Miho Hazama)がコンダクターを務めるDanish Radio Big Bandの共演作『Tributes』。全曲がマウリス・ネセットの作曲/アレンジで、ファンキーな曲からしっとりとしたスローバラードまで、優雅なビッグバンド編成で楽しめる絶品となっている。
個人的には叙情性に溢れた(3)「Tribute」が素晴らしい。ソロでも多忙に活躍するピアニスト、ヘンリック・グンデ(Henrik Gunde)のプレイも光るが、挟間美帆の指揮によるビッグバンドの演奏に乗って、マウリス・ネセットのソロにも感情が込められる。
5拍子を基本にした組曲(1)〜(2)「Bicycle Town」は今作のハイライトだろう。
生命力に満ちた演奏は聴いていてとにかく気持ちよく、日常のあらゆるストレスが消えていく感覚がある。このビッグバンドの迫力は大音量で楽しむのが正しい。
(6)〜(8)は「Children’s Day」という組曲となっており、快活だが時に思慮深くメランコリーに奏でられるアンサンブルがとても印象的だ。
マリウス・ネセット&挟間美帆 略歴
マリウス・ネセットは1985年ノルウェー生まれのサックス奏者。
両親ともに音楽家で、クラシックやジャズ、そして特にレディオヘッド(Radiohead)などのロックといった多様な音楽を聴いて育った。
幼少期、サックスを始める前にはドラムを習っており、この経験が彼にとって複雑なリズムを理解する上で重要になったようだ。
デビューアルバムは2008年の『Suite for the Seven Mountains』。同郷の偉大なサックス奏者ヤン・ガルバレク(Jan Garbarek)に通じる繊細な表現力と力強さを併せ持ち、クラシックからジャズまで幅広く活躍している。
挾間美帆は1986年東京都生まれのジャズ作曲家/編曲家/指揮者で、近年は特にラージアンサンブルやビッグバンドの指揮者として世界的に著名となっている。国立音楽大学在学中にジャズへの今日を深め、2010年にマンハッタン音楽院大学院へジャズ作曲專攻で留学。2012年にデビュー作『Journey to Journey』はその高度な編曲・演奏で一躍注目を集めた。
2016年には米国ダウン・ビート誌の「未来を担う25人のジャズアーティスト」にアジア人として唯一選出されている。
2019年作『Dancer in Nowhere』は2020年のグラミー賞ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム(Best Large Jazz Ensemble Album)部門にノミネートされるほどに世界的な注目を集めた。
2019年にデンマーク・ラジオ・ビッグバンド(Danish Radio Big Band)の首席指揮者に就任。今作はそのお披露目の舞台だ。
Marius Neset – tenor saxophone, soprano saxophone
Danish Radio Big Band, conducted by Miho Hazama :
Trumpet: Erik Eilertsen, Lars Vissing, Thomas Kjærgaard, Gerard Presencer (solo on Children’s Day Part 2), Mads la Cour (solo on Leaving The Dock),
Reeds Peter Fuglsang (as,ss, fl, cl), Nicolai Schultz (as, fl), Hans Ulrik(ts, ss, bcl, solo on Tribute),
Frederick Menzies (ts, cl, solo on Children’s Day Part 1),
Anders Gaardmand (bs, solo on Children’s Day Part 1),
Trombones: Peter Dahlgren (solo on Bicycle Town Part 1), Vincent Nilsson, Kevin Christensen, Annette Saxe (b-tb),
Jakob Munck Mortensen (b-tb & Tuba),
Guitar : Per Gade (g, solo on Children’s Day Part 1)
Piano : Henrik Gunde (solo on Leaving The Dock),
Bass : Kaspar Vadsholt
Drums : Søren Fros