ステファノ・カルディ&エンリコ・ピエラヌンツィによるアメリカの音楽集
イタリアのクラシックギタリストのステファノ・カルディ(Stefano Cardi)と、同じくイタリアのジャズピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)。互いに異なる音楽的バックグラウンドを持つ二人は、2017年に初共演して以来、それぞれに共通し、調和するルーツ的な音楽を探してきた。そして辿り着いた答えが、南北アメリカ大陸の古典的な音楽だった。
『American Music for Guitar & Piano』と題された本作には以下6名の先駆者たちの音楽がギターとピアノのデュオで演奏、収録されている。
アルバムの冒頭、(1)〜(3)は米国の“ラグタイムの王様”スコット・ジョプリン(Scott Joplin, 1867 – 1917)。西洋クラシック音楽と黒人音楽に影響を受けた、ジャズのルーツのひとつとされている陽気な音楽だ。
(4)〜(6)はブラジルの伝統音楽であるショーロを代表する作曲家/ピアニストのエルネスト・ナザレー(Ernesto Nazareth, 1863 – 1934)。西洋クラシックと同国の民族音楽に影響されたスタイルが特長的で、朴訥とした詩情は“ブラジルの魂”とも評されている。
(7)〜(9)は米国のジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin, 1898 – 1937)の曲。ジョージは詩人であった兄アイラとともに数多くのポピュラーソングを作曲し、後世に多大な影響を与えた。
(10)〜(14)はアルゼンチンの作曲家カルロス・グァスタヴィーノ(Carlos Guastavino, 1912 – 2000)の曲。同時代のアルゼンチンの作曲家としてはピアソラやヒナステラが有名だが、彼らの斬新性と比較するとカルロス・グァスタヴィーノの曲は古典的でロマンティックすぎ、当時国外ではあまり評価はされなかったようだが、近年再評価の機運が高まっている作曲家である。
(15),(16)は米国のピアニスト/作曲家デイヴ・ブルーベック(Dave Brubeck, 1920 – 2012)の作品。西洋クラシックからの影響を大きく受けたウエストコースト・ジャズの代表格として知られている。
(17),(18)はキューバのピアニスト/作曲家イグナシオ・セルヴァンテス(Ignacio Cervantes, 1847 – 1905年)の曲。セルヴァンテスはパリに留学するなど西洋のロマン派に強く影響される一方で、キューバの伝統的な民族音楽を取り入れ、多くの名曲を残した。
イタリアの巨匠によるジャンルを超えた共演
今作のほとんどはピアノのために書かれた曲だが、クラシックギターを加えたデュオ用にアレンジされ、ギターの音は楽曲に特徴的な輪郭をはっきりと浮かび上がらせる。ピエラヌンツィのピアノの音は普段のジャズよりも幾分硬いが、クラシックであることや楽器の違いによるものだろう。クラシックから影響を受けたジャズピアニストとはいえ、ここまで本格的に即興演奏をほぼ排除したクラシックピアノを弾く彼は(少なくとも私にとっては)珍しく逆に新鮮でもある。
ステファノ・カルディとエンリコ・ピエラヌンツィは2020年4月にも共演作『Prelude 1 for piano and guitar』をリリースしている。
Stefano Cardi – guitar
Enrico Pieranunzi – piano