ミシェル・ピポキーニャ&ペドロ・マルチンス、初のデュオ作
ともに十代の頃からその圧倒的な音楽性とテクニックで注目を浴びてきたベーシストのミシェル・ピポキーニャ(Michael Pipoquinha)と、ギタリストのペドロ・マルチンス(Pedro Martins)の初デュオ作『Cumplicidade』。何曲かでは超豪華ゲストも迎え、ブラジルの若手ナンバーワンとして鳴らす二人の妙技が楽しめる快作だ。
今作はカヴァー曲が多くを占める。
エルメート・パスコアール(Hermeto Pascoal)の(1)「Azeitona」、カルトーラ(Cartola)の(2)「Desfigurado」、ドミンギーニョス(Dominguinhos)の(3)「Desilusão」、ドリ・カイミ(Dori Caymmi)の(4)「Ninho de Vespa」、モニカ・サウマーゾ(Mônica Salmaso)をゲストシンガーとして迎えたギンガ(Guinga)の「Bolero de Satã」、作曲者トニーニョ・オルタ(Toninho Horta)本人をゲストに迎えた(7)「Raul」と(10)「Mr. Herbie」、バンドリン奏者アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)の(12)「A Vida Tem Dessas Coisas」など、ブラジルの音楽史から幅広くピックアップした意外性のある選曲となっている。
ギターとベース、たった二人の演奏だが、6弦ベースのミシェル・ピポキーニャはベース音と同時に高音弦でコードも弾いており、ギターソロになってもアンサンブルの厚みを失わない。逆にベースのミシェルがソロを取るときはギターのペドロ・マルチンスがギターの低音弦でベース音を鳴らすと同時にコードを弾き、どこを切り取っても嫉妬する気も起きないほどの完璧なデュオ演奏だ。
アルバムタイトル『Cumplicidade』の意味は“共犯”。
単独犯でも充分強力な二人が手を組んだ恐るべき作品。
天才たちのプロフィール
1996年生まれのベース奏者ミシェル“ピポキーニャ”ダヴィド(Michael “Pipoquinha” David)が、祖父や父の指導を受けベースを始めたのは10歳の頃からのようだが、そこから信じられないほどのセンスで上達をみせ、わずか1年後、11歳で公の場で演奏を開始。どこに行っても称賛を集めたという。
影響を受けたベーシストとしてはジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)、ヴィクター・ウッテン(Victor Wooten)、アルトゥール・マイア(Arthur Maia)、そして数々のMPB名作を残し日本で永眠したルイザォン・マイア(Luizão Maia)らの名前を挙げている。
一方のギタリスト、ペドロ・マルチンス(Pedro Martins)は1993年生まれ。ギターだけでなく鍵盤楽器やヴォーカルなどにも才能を見せるマルチ奏者として知られ、近年はカート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)のバンドにも参加するなど世界的な知名度を誇るブラジルの若手ホープだ。自身のバンドや他のアーティストのサポートなど幅広く活動し、既にブラジルのみならず、新世代ギタリストとして最注目の存在になっている。
Michael Pipoquinha – bass
Pedro Martins – guitar
Guests :
Toninho Horta – guitar, vocal (7, 10)
Mônica Salmaso – vocal (5)
Thiago Rabello – drums (11)