イスラエルの凄腕プログレ・バンド、Heathens 唯一のアルバム
イスラエルのプログレ/ジャズロック・バンド、ヒーサンズ(Heathens)の2018年作『The Best Of』。ベスト盤のようなタイトルだが、他にアルバムを出している気配がないのでこれが唯一のアルバムだろう(同名のイタリアのエレクトリック・バンドとの混同に注意!)。
このバンドには世界中にファンを持つイスラエルを代表するプログレバンド、Project RnL のギタリストのアロン・タミール(Alon “Tewl” Tamir)、ピンハス&サンズ(Pinhas & Sons)のベーシストのリオール・オゼリ(Lior Ozeri)、カリフォルニアを拠点に活動するサックス奏者アヴィ・ラファエロフ(Avi Rafaelov)、ニョーヨークで活躍する女性ピアニスト/SSWのシャイ・ポルトガリー(Shai Portugaly)、そしてボストンで活動するドラム奏者ヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)が参加。一筋縄ではいかない変拍子や早弾きなどテクニカル要素満載のプログレッシヴ・ジャズ・ロックが魅力的な一枚だ。
アルバムにはメンバーによるオリジナル曲のほか、(2)「Moon River」、(3)「Naima」、(6)「Caravan」といったよく知られたスタンダードのカヴァーも収録されているが、そのどれもがプログレバンドらしい奇天烈なアレンジで面白い。特にヘンリー・マンシーニ作の(2)「Moon River」でのアロン・タミールのギターはテクニックだけでない歌心が感じられる巧みなアレンジやアドリブを見せ、本作のハイライトとなっている。
(5)「Waltz in C# Minor in E Minor Op. 64」はショパンの「ワルツ第7番」をホ短調にアレンジ(原曲は嬰ハ短調)したもので、クラシカルなピアノに続いてメタルやプログレ好きなら絶対に気に入るはずの展開が待ち受ける。約4分半と本作の中ではもっとも尺は短いが、その中にぎっしりと詰まった自由なアレンジが楽しい。
(7)「Wishful Thinking」はベースのリオール・オゼリの作曲。彼らしい複雑な変拍子の曲だが、ゲスト歌手のレウト・レヴィ(Reut Levi)の美しいヴォイスがフィーチュアされており、サックスとユニゾンすることで難解さを感じさせない。
(8)「Valentine」はアロン・タミールと歌手のタマール・シャウキ(Tamar Shawki)との共作で、本作で唯一はっきりとした歌詞を持つ楽曲だ。タマール・シャウキはレバノンにルーツを持つイスラエル人シンガーで、アラブ音楽にも造詣が深いが、ここでは英語詞でキャッチーな歌を聴かせる。
Heathens :
Avi Rafaelov – saxophone
Alon “Tewl” Tamir – guitars
Shai Portugaly – piano
Lior Ozeri – bass
Yogev Gabay – drums
Guests :
Tamar Shawki – vocal(8)
Reut Levi – vocal(7)
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