ダリオ・ハルフィン、キャリア初のピアノ作品
素朴で美しいピアノの演奏と、背景で微かだが効果的に鳴るシンセサイザーや効果音が印象的なダリオ・ハルフィン(Dario Jalfin)の2020年作『Piano Piano』。これまで“歌”を軸に置いてきたシンガーソングライターが完全インストゥルメンタルで構築した新たな一面を見せる好盤だ。
(6)「Cantando」や(8)「Si Hay Que Elegir」は過去作品のピアノでの再録。基本はダリオ・ハルフィン自身のピアノと、曲によっては控え目なシンセサイザーやプログラミングによるリズムトラックが被せられているが、(9)「Hubo」のみソプラノサックスのラミロ・フローレス(Ramiro Flores)とドラムスのカルト・ブランダン(Carto Brandán)というアルゼンチンを代表するジャズミュージシャンとのトリオ編成となっている。
アルゼンチン音楽らしいところでもあるが、彼のピアノは音数も少なく、決してテクニックを誇示するような類のものではない。しかし和音にはジャズの豊かな響きがあり、右手のメロディーはシンプルながら確かに心に響くものがある。収録曲はいずれも2分から3分前後と短く、大袈裟になることもなく、極めて自然で、気分によっては積極的に選びたいアルバムという印象。
個人的には美しいワルツ(5)「Inspiración」がかなり好きだ。
ダリオ・ハルフォン 略歴
ダリオ・ハルフィンは1978年アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。2008年に『Le Pondria Una Letra』でデビュー、以降そのスピネッタ(Spinetta)にも通ずる音楽性でアルゼンチンの新世代オルタナティヴ・ロックの旗手として注目されてきた。
今回初めてピアノにフォーカスしたアルバムをリリースした背景には、これまでの長いキャリアのなかで映画やテレビのサウンドトラックの作曲家としての経験も積んできたことが大きい。
Darío Jalfin – piano, keyboards, programming
Ramiro Flores – soprano saxophone (9)
Carto Brandán – drums (9)