南アフリカの気鋭サックス奏者レファ・モセア、待望のデビュー作
南アフリカ出身のサックス奏者、レファ・モセア(Lefa Mosea)がアルバム『Double Standards』をリリースした。
2015年に自身のバンドを結成してから5年、資金難など困難を乗り越えた末の待望のデビューアルバムはアフロ・コンテンポラリー・ジャズの第一線とも言える好内容で、南アフリカ・ジャズ新世代のポテンシャルを十二分に感じ取れる作品になっている。
アフリカ南部の言語に特徴的な吸着音が印象的なスポークンワードに導かれる(1)〜(2)「Mr Ngqawana」から、アフリカの伝統的な音楽の影響を強く受けた曲調のジャズが並ぶ。
クライマックスは喉の奥から絞り出すようなポエトリー・リーディングのDongadalaをフィーチュアした(4)「Prayer for Libya」から、女性コーラスが美しい(5)「Naha Ya Rona」の流れだろう。レファ・モセアのサックスは決して主張が強い感じではないが、地に足のついた確かな強さを感じさせる音色とフレージングはとても魅力的だ。
どちらかというとヴォーカルが目立つ前半をクールダウンさせるような、インストのバラード(6)「Ready to recieve」も素敵だ。
苦難を乗り越えリリースされたデビュー作
レファ・モセアは南アフリカ・ヨハネスブルグ生まれ。10代前半の頃にプレトリアに移り、音楽の才能はそこで開花した。2003年に音楽理論とギターのレッスンを開始。サックスを始めたのは高校在学中の2005年頃、プレトリアの州立劇場にある音楽開発財団(VMMDF)でその楽器を紹介されてからだった。最初はお金がなかったため自分の楽器を買うことができなかったが、財団を通して学ぶ機会を与えられ、以降振り返ることはなかった。
2008年にネルソン・マンデラ・メトロポリタン大学に入学しジャズの学位をとるために学んだが、経済的問題で後に中退。しかしその後もポートエリザベスを拠点に様々なバンドでステージでの経験を積み、2015年に自身のバンド「Lefa Mosea&The Double Standards Quintet」を結成した。
2016年から今作のデビューアルバムの録音を開始したが、レコーディングがうまく進まず、途中で資金が底を突くなど数々の困難に遭遇。それでも彼は途中で諦めて故郷に帰ることは取り返しのつかない失敗になると考え、一からレコーディングをやり直して2020年末についにアルバムのリリースに漕ぎ着けた。