アンゴラの“今”を歌う傑作。パウロ・フローレス&プロディジオ

Prodigio & Paulo Flores - A Bênção e a Maldição

アンゴラを代表する音楽家二人による親密な極上音楽

共にアンゴラを代表する音楽家であるラッパーのプロディジオ(Prodigio)とSSWのパウロ・フローレス(Paulo Flores)の強力タッグが実現した『A Bênção e a Maldição』は、一切無駄のないシンプルさが素晴らしい傑作だ。

年齢もひとまわり以上離れ、普段やっている音楽のジャンルも異なるが、意気投合し奇妙な友情で結ばれた二人の音楽家によるこのプロジェクトは「エスペランサ(希望)」と呼ばれ、録音も親密な雰囲気のなか行われた。アルバムタイトルは“祝福か呪いか”の意味で、様々な問題を抱えるアンゴラの現況を詩的に歌いながらも、二人で夜通し語り合うような空気がそのままサウンドにパッケージされていて他にない稀有な印象を抱くアルバムになっている。

(1)「História」の冒頭、アカペラで歌うパウロ・フローレスの見事に枯れた声が実に素晴らしい。
タイトルの通りアンゴラの歴史、家族の素晴らしさ、子供たちの目に宿る希望の喜びを伝えつつも、貧富の格差という社会問題を嘆き「私たちの土地は平等ではない、これが祝福なのか呪いなのか分からない」とも歌う。プロディジオのラップはHipHopの作法に倣っており、パウロ・フローレスの歌との対比が際立つ。

本作からの最初のシングルでもある(2)「Nzambi」のタイトルはキンブンド語で「神」を意味する単語だが、歌詞は他の曲と同様にアンゴラの公用語であるポルトガル語で歌われる。アンゴラの伝統音楽であるセンバ(Semba)が、同じくポルトガル語で歌われるブラジルのサンバ(Samba)のルーツのひとつと言われているように、この曲もブラジル北東部のショッチやフォホーといったリズムにも通じる感覚を持っており親しみやすい。

(2)「Nzambi」のMV。
タイトルはキンブンド語で「神」を意味する。

(3)「Fome」のMV。

パウロ・フローレス(Paulo Flores)は1972年、アンゴラの首都ルアンダ生まれ。アンゴラの人々の生活、戦争、政治の腐敗といったテーマを扱ったセンバ(アンゴラの伝統音楽)のシンガーソングライターとして同国を代表するミュージシャンとなっている。1988年に『Kapuete Kamundanda』でデビュー、以降20枚近くのアルバムを発表。

一方、ラッパーのプロディジオ(Prodigio)の名で知られるオスヴァルド・モニス(Osvaldo Moniz)は1988年(パウロ・フローレスがデビューした年!)生まれ。健康上の問題のために幼少期は家族とともにポルトガルでの生活を余儀なくされた。12歳の頃からラップのリリックを書き始め、2015年にソロで発表した『Prodígios』はアンゴラでベスト・アルバム・オブ・ジ・イヤーを獲得している。彼はまた、ヒップホップ・グループ Força Supremaのメンバーとしても知られている。

(2)「Nzambi」のライヴ映像。

Prodigio & Paulo Flores - A Bênção e a Maldição
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