ロシアの気鋭ピアノトリオ、LRK Trio 『Urban Dreamer』
ピアニスト/作曲家のエフゲニー・レベジェフ(Evgeny Lebedev)率いるモスクワのピアノトリオ、LRK Trio は2020年に最新作『Memory Moment』を、そしてエフゲニー自身も2021年に初のソロ作『Solo Sessions』をリリースしているが、今回は敢えてトリオの2018年作『Urban Dreamer』を取り上げたい。
この作品の曲はLRK Trioの2017年に行われた日本ツアーに際してつくられたものだが、豊かな抒情性、サンプラーやエレクトロニカを効果的に用いた未来的なサウンド、トリオの高い演奏技術や多彩なゲストの参加など、とても面白い作品になっている。
どこから聴いても素晴らしい演奏ばかりだが、特に(3)「Lost in Tokyo」には眼を見張るものがある。都会の雑踏や和楽器を思わせるトイピアノによるテーマ、怒涛の変拍子、2分半から突如テンポチェンジし激しく鍵盤を駆けずり回るピアノソロ。文化や虚構や無機質が錯綜する東京の混沌を見事に現した1曲だ。
続く(4)「Clockwork Doll」は女性シンガー、ヴァルヴァラ・レヴニュク(Varvara Revnyuk)による器楽的スキャットが素晴らしい。チェリストのニコライ・ソロノヴィッチ(Nikolay Solonovich)をフィーチュアした瞑想的で宇宙的な(2)「Abyss」、ペンシルベニア州出身の歌手ジェイディー・ウォルター(JD Walter)が歌う(5)「Thoughts of…」は弦楽四重奏も迎えしっとりと洗練した響き。
そして日本人なら必ず心の琴線に触れるであろう、ラストを飾る(8)「Aka Tombo(赤とんぼ)」。誰もが知る山田耕作による童謡をアレンジしたこの演奏は都会的な洗練と、楽曲が持つのどかな田園の情景が交差する極上の演奏。ペダルスティールギター奏者のボッセ・サヴィク(Bosse Savik)の演奏もこの雰囲気と見事にマッチしている。
LRK Trio :
Evgeny Lebedev – piano, toy piano, sampler, accordion
Anton Revnnyuk – upright bass, piccolo bass, electric bass, vocals
Ignat Kravstov – drums, sampling pad, metallophone, percussion
Guests :
Evgeny Subbotin – violin
Artur Adamyan – violin
Shamil Saidov – viola
Nikolay Solonovich – cello
Varvara Revnyuk – vocal
Konstantin Safyanov – whistle
Bosse Savik – pedal steel guitar
JD Walter – vocal