シウヴァ、5枚目のスタジオアルバム『Cinco』
ブラジルの人気シンガーソングライター/マルチ奏者、シウヴァ(Silva, 「シルヴァ」とも表記、本名:Lúcio Silva de Souza)の『Cinco』は、サンバやMPBなどのブラジル音楽にスカやソフトロックの要素などもゆるく融合したとても聴き心地の良いポップス作品だ。
アルバムタイトルの“Cinco”とはポルトガル語で“5”の意味で、これは彼の5枚目のスタジオアルバムであることを表す。本作は1988年生まれのシウヴァが6歳年上の兄、ルーカス・ソウザ(Lucas Souza)と共に活動を開始した頃からの14の未発表曲で構成されており、自身の作曲のものの他、兄との共作も含まれている。
これまでに2014年にフェルナンダ・タカイ(Fernanda Takai)と「Okinawa(沖縄)」で、2016年にはマリーザ・モンチ(Marisa Monte)と「Noturna」で共演するなどブラジルを代表する歌姫とも共演してきたシウヴァだが、今作では(7)「Facinho」でリオ五輪開会式にカエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジルとともに出演していた人気歌手アニッタ(Anitta)と共演。さらにはボサノヴァの大御所ジョアン・ドナート(João Donato)と(12)「Quem Disse」で、ヒップホップからサンバまで幅広く吸収した音楽性が魅力のクリオーロ(Criolo)と(13)「Soprou」で共演するなどゲストも豪華だ。
楽曲はどれも慈愛に満ちた極上のポップスで、ブラジル音楽の豊かな伝統と、ジャズやスカなど外来の音楽が絶妙にブレンドされたサウンドには品があり、リラックスしたムードを醸し出す。2012年のデビュー作『Claridão』でのチープなシンセポップからの変貌ぶりには改めて驚かさせる。ラスト(14)「Má Situação」は兄ルーカス・ソウザとの共作だが、これが驚くほどストレートな郷愁感のあるサンバで、この素晴らしいアルバムの締めくくりに相応しい。