パキスタン出身の女性SSW、ニューヨークから世界へ飛び立つ傑作新譜

Arooj Aftab - Vulture Prince

パキスタン出身の気鋭音楽家アルージ・アフタブの新譜

パキスタン出身で現在はニューヨークを拠点に活動する歌手/作曲家アルージ・アフタブ(Arooj Aftab)の新譜『Vulture Prince』は、パキスタンの伝統音楽(ヒンドゥスターニー音楽)とジャズの平和的で穏やかなミックスが心地いい素晴らしい音楽作品だ。

スコットランド出身のハープ奏者マイーブ・ギルクライスト(Maeve Gilchrist)やブラジル出身のギター奏者バジ・アサド(Badi Assad)、ギリシャ出身のベース奏者ペトロス・クランパニス(Petros Klampanis)、テキサス州サンアントニオ生まれのヴァイオリン奏者ダリアン・ドノヴァン・トーマス(Darian Donovan Thomas)などなどニューヨークに集うトップアーティスト達との深い信頼関係から生まれたグローバルで暖かなルーツ・ミュージック。西洋楽器がサウンドのほとんどを占めているが、その上で優雅に舞うアルージ・アフタブのヴォーカルには確かなアラビアの息遣いが聞こえ、そのバランスの美しさに息を呑む。

魅力的なゲスト達が奏でる音にどうしても注目してしまうが、彼女の真骨頂は(5)「Mohabbat」かもしれない。パキスタンに伝わるこの古いガザル(ghazal, 恋愛詩)でのアルージの深く豊かな歌の表現は、文化を超えた人類共通の心に訴えかけてくるものがあるように感じる。

ブラジルのギタリスト、バジ・アサドとの共演曲(2)「Diya Hai」

保守的な文化の中で育った類稀な音楽家

アルージ・アフタブは特に女性にとって音楽を学ぶ機会が非常に限られているパキスタンの保守的な文化の中で育った。
独学でギターを弾き歌ってきた彼女がバークリー音楽大学の奨学金に応募し、オンラインでの受講を終えたとき、誰がこのような今日の成功を信じられただろうか──。彼女が育った文化の中では音楽における女性の役割は専ら歌うことで、ギターを弾いたり作曲することではなかったという。家族でさえ、彼女の才能に気づいたのはバークリーの講座を受け始めたときだった。このエピソードは音楽での成功の要因が、純粋な才能によるものだけではないことを生々しく物語っている。彼女が米国に留学することを最終的に認めたのは他でもない彼女の家族だった。

バークリーの4年間での熱心な研究でその才能を大きく伸ばしたアルージ・アフタブは、2014年に『Bird Under Water』でデビューを飾った。2018年にはエレクトロニック・ミュージックを大きく取り入れたアンビエントな表現で『Siren Islands』を発表している。

アルージ・アフタブは自らの音楽を世界中のリスナーに届けること、さらには新しい音楽の地平を探求することに情熱を傾けている。多くの協力者を得て世に送り出された今作『Vulture Prince』はその夢の実現への大きな一歩だ。

Arooj Aftab – compose, guitar, vocal
Maeve Gilchrist – harp
Darian Donovan Thomas – violin
Petros Klampanis – piano, double bass
Badi Assad – guitar
Juliette Jones – violin
Lady Jess – violin
Jarvis Benson – viola
Malcom Parson – cello
Nadje Noordhuis – flugelhorn
Bhrigu Sahni – guitar
Mario Carrillio – double bass
Jorn Bielfeldt – drums
Jamey Haddad – percussion
Gyan Riley – guitar
Shahzad Ismaily – synth
Kenji Herbert- guitar

Arooj Aftab - Vulture Prince
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