コロナ禍で描く希望の音楽。ブラジル重鎮ピアニストと若手天才ギタリスト、初の共演作

Ricardo Bacelar & Caina Cavalcante - Paracosmo

ヒカルド・バセラール&カイナン・カヴァルカンチ、初の共演作

ブラジルの重鎮ピアニスト/作曲家、ヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)と若手ギタリストのカイナン・カヴァルカンチ(Cainã Cavalcante)の初の共作『Paracosmo』

アルバムは美しい小鳥たちの囀りに導かれ、二人の故郷であるブラジル東部の伝統的なリズム、バイアォンを取り入れた(1)「Vila dos Pássaros」で幕を開ける。豊かなピアノとギターのハーモニー、踊り出したくなるような軽快なリズムが心地いい。ヒカルド・バセラールはピアノの他に多重録音でパーカッションやキーボードも演奏し、タイトルにある“鳥たちの村”の情景を軽やかに描き出す。

(1)「Vila dos Pássaros」のセッション動画。
二人はマスク姿だが、これは新型コロナを軽視するブラジル政府の姿勢への批判も込められている。

アルバムタイトルにも採用されている(2)「Paracosmo」は“想像上の場所”を意味する。
新型コロナはブラジルに甚大な被害をもたらし続けており、今もなお多くの人々が自宅から出られない状況に置かれている。しかしそんなコロナ禍の中にあっても、人々は音楽の力によってエネルギーを与えられ、想像上の場所を訪れることができる…そんな想いが込められている。バセラールはこのような苦しい世の中でも、音楽があれば未来に希望を持つことができると信じているのだ。
曲調は穏やかで美しく、まさに心に希望を抱かせてくれる。

(2)「Paracosmo」

ポルトガルの伝統音楽、ファドの哀愁も感じさせる(3)「Valsa do Cansaço」、2020年に逝去した鍵盤奏者ライル・メイズに捧げられた爽やかなジャズ(4)「Lyle」、ヒカルドの妻に捧げられた美しいバラード(5)「Manoela」、“子守唄”を意味する(6)「Berceuse」、ピアノとギターで語り合うように始まり、中途では自由で実験的な音のもつれ合いもありつつ、穏やかに収束してゆく起承転結の美学を持つ9分間におよぶ大作(7)「Caminhos dos Mouros」。

すべてヒカルドとカイナンの共作による全7曲は、どれもが豊かな歌心を持ち、ピアノとギターの音色には幸せと希望がある。初共演作と思えないほど心の通じ合いを感じさせる素晴らしい音楽だ。

プロフィール

ヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)は1967年ブラジル・セアラ州生まれのピアニスト/作曲家/プロデューサー。ブラジルの80〜90年代を代表するリオ発のロックバンド、ハノイ・ハノイ(Hanói-Hanói)の鍵盤奏者として長年活躍し、2001年にクラシック音楽の影響も色濃く現れた初のソロアルバム『In Natura』を発表。これまでにソロで5枚ほどのアルバムをリリースしている。
彼は最新技術で設計されたスタジオを作り、新たに「Jasmin Music」レーベルを創立。本作は同レーベルからの初のリリースとなる。

カイナン・カヴァルカンチ(Cainã Cavalcante)はセアラ州フォルタレーザ出身のギタリスト/作曲家。1990年生まれの若手ながら既に8作のアルバムをリリースしており、ブラジルのギター界の逸材だ。ドミンギーニョス(Dominguinhos)、シコ・セーザル(Chico César)、ヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)、アミルトン・ジ・オランダ(Hamilton de Holanda)などの大物から、ミシェル・ピポキーニャ(Michael Pipoquinha)、ペドロ・マルチンス(Pedro Martins)といった若手まで多数の優れた音楽家と共演してきた。

Ricardo Bacelar – piano, keyboards, percussion
Cainã Cavalcante – guitar, bass guitar

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