MPBの歴史に燦然と輝く名盤、Djavan『Luz』
ブラジル・ポピュラー音楽(MPB)の歴史に燦然と輝く大傑作、ジャヴァン(Djavan)の『Luz』(1982年)。
米国のジャズ/フュージョン系の人気ミュージシャンも多数参加した彼の出世作として知られている本作は、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)がハーモニカで参加した(1)「Samurai」、そしてヒューバート・ロウズ(Hubert Laws)のフルートが舞い踊る(2)「Luz」でリスナーをいきなり惹き込み、その後に続く(3)「Nobreza」や(5)「Sina」、(8)「Açaí」などのバラードも絶品という、捨て曲なしのまさしく名盤中の名盤である。プロデューサーはかのブルーノート・レーベルでオルガン奏者として数々のヒットを飛ばしたロニー・フォスター(Ronnie Foster)が務めている。
今作で最も有名な曲といえば、やはり(1)「Samurai」だろう。
コード進行は単調だがオシャレで、スティーヴィー・ワンダーのクロマチック・ハーモニカが効果的。歌詞の“サムライ”が示す意図は未だによく分からず、MVの浅はかな日本文化への理解度も鑑みれば単に“サムライ”言いたかっただけなんとちゃうかという印象はあるが、グルーヴィーな曲調はとてつもなくかっこいい。
(2)「Luz」は「Samurai」同様に跳ねたリズムが特徴的なグルーヴィーな曲で、コード進行は「Samurai」に比べバリエーションに富んでおりとてつもなくオシャレ。
特にイントロで登場する6つのコードのうち4つを所謂“ジミヘンコード”(○7#9)として広く知られている不協和音を用いるという荒技で、この和音をこれほど効果的かつ印象的に使っている曲は世界広しと言えど他に知らない。
(5)「Sina」も今作随一の名曲で、地味ながら聴き返す度にその魅力に取り憑かれてしまう所謂スルメ曲。独特のグルーヴや浮遊感、サウダーヂが最高に気持ちいい。
(6)「Pétala」はオリジナル盤ではA面の冒頭に配置された曲。ここではオルガンとサックスがとても美しく印象的だ。
ジャヴァン(Djavan)プロフィール
ジャヴァン、本名ジャヴァン・カエターノ・ヴィアナ(Djavan Caetano Viana)は1949年にブラジル北東部アラゴアス州都マセイオでオランダ系の白人の父親と黒人の母親の貧しい家庭に生まれた。
ミュージシャンとして初期の頃はビートルズ、特にポール・マッカートニーからの大きな影響のもと、独学でギターを習得し“Luz、Som、Dimensão(LSD)”というバンドを結成し演奏していた。1973年にリオデジャネイロに移住し本格的に音楽活動を開始し、1976年に初のアルバム『A Voz e o Violão, a Música de Djavan』をリリース。冒頭に収録されたサンバ「Flor de Lis」は今も彼の代表曲として知られている。
1982年にCBSと契約しアメリカに進出、同年に録音したこの『Luz』は世界で広く認知されるきっかけとなった。
ちなみに『Luz』は日本国内盤のみジャヴァン認可のもとカヴァーアートが上記のように変更されている。
この印象的な美しい鳥はエボシドリというアフリカに生息する鳥のようだ。
Djavan – vocal, acoustic guitar
Stevie Wonder – harmonica
Hubert Laws – flute
Larry Williams – alto saxophone, flutes
Abraham Laboriel – bass
Sizão Machado – bass
Luis Conte – percussion
Harvey Mason – drums
Teo Lima – drums
Paul Jackson Jr. – guitar
Luiz Avellar – keyboards
Jorge Dalto – keyboards, piano
Café – percussion
Ronnie Foster – keyboards, synthesizer
Zé Nogueira – soprano saxophone
Steve Kujala – soprano saxophone, flute
Kim Hutchcroft – tenor saxophone
Marquinhos – tenor saxophone
Ernie Watts – tenor saxophone
Gary Herbig – tenor saxophone, flute
Bill Reichenbach – trombone
Moises – trombone
Raul De Souza – trombone
Larry Hall – trumpet
Gary Grant – trumpet, flugelhorn
Jerry Hey – trumpet, flugelhorn