懐かしくて新しい、イスラエルの男女2人組フォーク・ポップ、ローラ・マーシュ

Lola Marsh - Someday Tomorrow Maybe

イスラエルの男女バンド、ローラ・マーシュ(Lola Marsh)

イスラエルの男女2人組インディー・ポップバンド、ローラ・マーシュ(Lola Marsh)がとても良い。少し懐かしさも感じさせるフォーキーでシンプルな中に一捻りあるメロディー、素朴だけど不思議な魅力を湛えた女性ヴォーカル・ヤエル・ショシャナ・コーエン(Yael Shoshana Cohen)の絶妙な声の表現力と、随所にセンスを見せるキーボードやギター、プログラミングなどでサウンド面全般を担うギル・ランダウ(Gil Landau)のコンビ。一応ベースとドラムスを加えた4人がバンドメンバーとしてクレジットされているが、実質的にはヤエルとギルのデュオプロジェクトだ。

Lola Marshの活動は2013年にこの二人によってテルアビブで始まり、2016年の最初のEP『You’re Mine』がいきなりの大ヒット。2017年にアルバム『Remember Roses』、2020年に2作目となる『Someday Tomorrow Maybe』をリリースしイスラエルのポップシーンの最前線に立っている。

2ndアルバムからの2つのミュージックヴィデオは、ベルリン・ミュージック・ヴィデオ・アワードでも注目され、「Echos」がベスト・ソング部門で優勝、「Only For A Moment」はベスト・シネマトグラフィ部門2位という成功を収め、音楽だけでなくトータルでのクリエイティビティでも高く評価されている。

Lola Marsh の最初のヒット「You’re Mine」

彼らの音楽の魅力は冒頭にも書いたように万人受けするシンプルさの中に、ちょっとした引っ掛かりのようなもの─それはハッとさせられるようなメロディーの運び方だったり、音使いだったり、あるいは驚くようなアイディアが詰まったMVでの視覚的なものだったり、もしかしたら二人の関係性への世俗的な興味から来るものでもあるかもしれない(二人は一時的な恋人関係にあったことはあったが、今ではただの“バンドメイト”とのこと)─魅力というのは、大抵そういうものだと思う。

忘れてはならないのが、彼らの音楽の歌詞は全て英語で歌われているという点だ。
ヘブライ語の歌を歌うポップ歌手が多いイスラエルにあって、歌詞を英語で歌うというのは国際的なヒットを得る最初のハードルでもある。イスラエルのSSWヤエル・ナイム(Yael Naim)が英語で自作曲を歌い、2008年にAppleのCMに採用され全世界で大ヒットを記録したことを挙げるまでもなく。

Lola Marshが第二のヤエル・ナイムを狙っているかどうかは分からないが、少なくとも彼らの目は世界に向けられている。

2ndアルバム『Someday Tomorrow Maybe』収録の(1)「Echoes」。少しざらついた懐かしのサウンドは、今聴くとなぜか新鮮だ。
2ndアルバム『Someday Tomorrow Maybe』収録の(2)「Only For a Moment」。CGを駆使した卓球のMVは必見。

2021年8月下旬には最新のEP『For the Tender Heart』をリリースしたローラ・マーシュ。これからどんな飛躍を遂げるか楽しみだ。

Yael Shoshana Cohen – lead & backing vocals
Gil Landau – guitars, bass, ukelele, piano, keyboards & synths, programming & sampling, percussion, vocals
Mati Gilad – bass, keyboards & synths
Dekel Dvir – drums, percussion

Lola Marsh - Someday Tomorrow Maybe
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