結成四半世紀を迎えた炎のバルカンブラス、Fanfare Ciocărlia
ジプシー・ブラス(チョチェク)の世界的ブームを牽引してきたルーマニアのバンド、ファンファーレ・チョカルリア(Fanfare Ciocărlia)は結成25周年を迎えたようだ。新譜『It Wasn’t Hard to Love You』でも高速ブラスの快感は健在。血湧き肉躍る飾らない音楽の原初的興奮に満ちている。
これまでも様々な曲をバルカンブラスでカヴァーし驚かせてきた彼らだが、今作ではビル・ウィザース(Bill Withers)が歌った名曲(1)「Just the Two of Us」をアルバムの幕開けに持ってきた。無理矢理なバルカンブラス・アレンジ感は否めないが、ファンからは概ね好評なようで、これも期待に応えたいという彼らなりのファンサービスの形なのだろう。
(2)「Babo Never Worked a Day」のようなオリジナルは、これぞジプシーブラス!といった純度100%な感じでやはり良い。(3)「The Hungarian Wild Bunch」はブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」を一部に引用しながら哀愁感満載に燃え上がるブラスサウンド。
今作で作曲を多く担当するのはファンファーレ・チョカルリアのメンバーではなく、大半をイスラエル生まれ・ロンドン在住の作曲家/マルチ奏者コビー・イスラエリテ(Koby Israelite)が手がけている。ジョン・ゾーン主宰のレーベルから自身のアルバムも複数出している彼はファンファーレ・チョカルリアに並ぶジプシー・ブラスの雄、タラフ・ドゥ・ハイドゥークス(Taraf De Haidouks)とも仕事をするなど、この手のサウンドの影の立役者だ。
Fanfare Ciocărlia、ロマの伝統を受け継ぐブラスバンド
ファンファーレ・チョカルリア(ファンファーレ・チョカリーアとも表記される)は元々はロマの人々が多く住むルーマニア北西部の人口400人程度の小さな村ゼチェ・プラジニ(Zece Prăjini)で地元の結婚式や洗礼式などで演奏するアンサンブルだったが、村を訪れたドイツ人プロデューサーにその才能と可能性を見出され1997年にファンファーレ・チョカルリアとして正式にバンドを結成し翌年に『Radio Pascani』でデビュー。生活用品そのものの凸凹の楽器を携えて世界中をツアーし瞬く間に大人気となった。
日本にも5度ほど来日しフジロック・フェスティバルなどで観客を沸かせた。
彼らの成功の様子はドキュメンタリー映画『炎のジプシーブラス 〜地図にない村から〜』(2002年)でも描かれている。
Fanfare Ciocărlia :
Costel Oprica Ivancea – saxophone, clarinet
Dan Ionel Ivancea – saxophone, vocals
Costica “Cimai” Trifan – trumpet, vocals
Paul Marian Bulgaru – trumpet
Radulescu Lazar – trumpet, vocals
Craciun Ovidiu Trifan – trumpet
Benedikt Stehle – percussion
Costel “Gisniaca” Ursu – bass drum
Constantin Cantea – tuba
Monel Trifan – tuba
Constantin Calin – tenor horn
Laurentiu Mihai Ivancea – baritone horn
Guests :
Džambo Agušev – trumpet (10, 12)
Vladuţ Ivancea – clarinet (2, 7, 9)
Michael Metzler – darabuka (2, 11)
Iulian Canaf – vocals (8)