民族音楽のカオスな究極進化…ロシアの11人編成バンド「hodíla ízba」が凄まじい

hodíla ízba - hodun

民族音楽の究極進化…4人の女性ヴォーカル擁するhodíla ízba

ロシアのジャズ周辺の音楽シーンが俄かに面白くなってきた。

4人の女性ヴォーカリストを擁するモスクワの11人組バンド、hodíla ízbaのデビュー作『Ходуном』はなかなか驚きに満ちた作品だ。歌詞の多くは何百年も前からロシア各地に伝わる伝承をベースにしている。彼らが伝えたいのは、伝統を継承していくことの重要性だ。

だが、ここにはメンバーの祖母世代が歌っていた曲が彼女らがかつて想像もしていなかった形で存在している。そこはかとなくカルトな匂いで、伝統を受け継いでいく方法として果たしてこれが正しいのかどうかはよく分からないが、とにかくめちゃくちゃ面白いことだけは事実だ…。

hodíla ízbaの音楽はプログレッシヴ・フォークを軸に、ファンク、ジャズ、レゲエ、メタル、アフリカ音楽にトリップホップ…伝統と現代音楽の一見奇妙なようでいて自然な接合。ミクスチャーなサウンド自体は現代的だが、ヴォーカリストたちの歌唱法が土着音楽をしっかりと継承していてそのコントラストが斬新だ。何よりもヴォーカリストが4人(バラライカ担当の男性、Илья Шаровも一部でヴォーカルを取っている)という編成も色彩感と迫力があり素晴らしい。
(2)「Шёл я яром」、(4)「Дождь」、(6)「Гуляла」、(7)「Подружка」などを聴けば彼らがいかにバリエーションの豊かな感性を備えているかが分かると思う。1曲ごとに異なるジャンルからあからさまな影響を受けていながら、4人の女性ヴォーカリストの声を軸にアルバム全体としては妙なまとまり感を見せる。

彼らのバンドサウンドの中で多層的な“声”のほかに妙な生々しい生命感を持つのがティムール・ネクラーソフTimur Nekrasov)のサックスで、空間を切り裂くようなソロは各曲で存在感を放つ。

(1)「Кривошейка」。ヴォーカリストたちの声の重なりが圧巻、サックスソロにも注目。

前述のとおり、どうしてこうなった…という曲ばかりなのだが、この混沌とした楽曲群や、ときに叫ぶように歌い、ときに聖歌隊のような美しいチャントを聴かせるヴォーカリストたちが織り成す音楽には明らかなカタルシス(浄化)がある。民族音楽の最終進化系とも呼ぶべきサウンドに驚愕。現段階ではロシア語の情報(ロシア語だが、この記事などは充実している)しか存在せず、彼らの正確な詳細にまで踏み込めないことが残念でならないが、読み方すら判然としないhodíla ízbaの存在は、先日紹介したサンクトペテルブルクのバンドSettlersと同様に今ロシアのシーンに注目するべき最大の理由であることは間違いない。

ダンサブルな人力四つ打ちビートの(2)「Шёл я яром」。妙なサイケデリックさがクセになる。

Anastasiya Chentsova (Анастасия Ченцова) – vocals
Leyla Zeid Kilani (Лейла Зейд Килани) – vocals
Marina Rakhmattulina (Марина Рахматтулина) – vocals
Maria Shishlova (Мария Шишова) – vocals
Ilya Sharov (Илья Шаров) – vocals, balalaika
Timur Nekrasov (Тимур Некрасов) – saxophone
Viktor Glazunov (Виктор Глазунов) – drums
Anton Lymarev (Антон Лымарев) – bass
Denis Sitnov (Денис Ситнов) – guitar
Sergey Yeltyshev (Сергей Елтышев) – keyboards
Павел Паньковский – effects, arrangement author

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