オマール・ソーサ&セク・ケイタ、パンデミック後の世界への希望を奏でる新譜

Omar Sosa & Seckou Keita - Suba

オマール・ソーサ&セク・ケイタ2nd『Suba』

キューバのピアニスト、オマール・ソーサ(Omar Sosa)とセネガルのコラ奏者セク・ケイタ(Seckou Keita)が再び共演。ロックダウン中に制作された新譜『Suba』のタイトルはセク・ケイタの母国語であるマンディンカ語で「日の出」を意味し、パンデミック後の新しい世界への希望の願いが込められているとのこと。二人の共演は2017年の『Transparent Water』以来の2作目となる。

今作では二人とともに世界中をツアーしてきたベネズエラ出身の打楽器奏者、グスターヴォ・オバージェス(Gustavo Ovalles)やブラジルのチェリスト、ジャキス・モレレンバウム(Jaques Morelenbaum)らも参加し、祈りにも似た心の内側に響く美しい音楽が奏でられている。

セク・ケイタの煌びやかなコラの音色やオマール・ソウサの思慮深く透明なピアノの音色はもちろん、やはりセク・ケイタの伸びやかなヴォーカルがとてつもなく素晴らしい。ここにグスターヴォ・オバージェスの打楽器が加わった演奏はアフリカという共通のルーツを持つ三人の原点そのもので、少しばかり悲しげな響きと力強く前に進もうとする自然な意志が同居する。それは新しい一日の始まりを絶望ではなく希望で迎えようという全人類への励ましのようにも聴こえる。

西アフリカの伝統的な弦楽器であるコラは日本人にはあまり馴染みがないかも知れないが、この楽器の美しい音色や魅力を知らしめるには十二分な本作。現在の科学では現生人類(ホモ・サピエンス)の祖先はアフリカで誕生し世界に広がっていったという“アフリカ単一起源説”が定説となっているが、この作品を聴いて、不思議とある種の懐かしさや郷愁の念を覚えるのもとても自然の理に適っているように思える。

彼らが2017年に最初のツアーを行った時、パリのホテルでセコ・ケイタが書き「オマール、これは私たちの次のレコードの最初の曲だ!」と言って聴かせたという(2)「Allah Léno」
(1)「Kharit」のMV。タイトルはウォロフ語で「友達」を意味する

オマール・ソーサ&セク・ケイタ 略歴

ピアニストのオマール・ソーサ(Omar Sosa)は1965年キューバの内陸都市カマグエイ生まれ。5歳頃から最初はドラムスやパーカッションで音楽を学んできた。
伝統的なアフロ・キューバン音楽、ショパンやバルトーク、サティなどヨーロッパのクラシック音楽、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーン、オスカー・ピーターソン、ハービー・ハンコック、チック・コリアといったジャズ、そしてチューチョ・バルデス率いるキューバの伝説的バンド、イラケレなど様々な音楽から影響を受けている。これまでに30枚以上のアルバムをリリースしており、グラミー賞にも何度かノミネートされているスピリチュアル・ジャズの巨匠。

コラ奏者のセク・ケイタ(Seckou Keita)はセネガル共和国南部のカマサンスに1978年に生まれた。名前が示す通り、13世紀にマリ帝国を築いたスンジャタ・ケイタの子孫にあたるグリオの家系の出身。
叔父のコラ奏者ソロ・シソコ(Solo Cissokho)の指導のもと1996年から音楽活動を開始し、世界中をツアー。1998年にはカメルーンの人気バンド、バカ・ビヨンド(Baka Beyond)に打楽器奏者として参加、2000年からはソロ活動を行なっている。これまでにサリフ・ケイタやユッスー・ンドゥールといった国際的な音楽家との共演、またインド音楽やラテン音楽などアフリカ文化を飛び越えたワールドワイドな活動でも知られている。

(5)「Gniri Balma」
タイトルはバランテ語で「バラフォンの踊り」を意味する。

Omar Sosa – piano, percussion, backing vocals
Seckou Keita – kora, percussion, lead vocal
Gustavo Ovalles – percussion
Jaques Morelenbaum – cello
Dramane Dembélé – flute
Steve Argüelles – sequencing, effects, percussion

Omar Sosa & Seckou Keita - Suba
最新情報をチェックしよう!