ヴォーカルアンサンブルとピアノトリオによる耽美な北欧ジャズ作品『Dimma』

Ensemble Edge - Dimma

ヴォーカル・アンサンブルとピアノトリオによるヤン・ヨハンソン・トリビュート作

デンマークの新進ヴォーカル・アンサンブル、アンサンブル・エッジ(Ensemble Edge)『Dimma』は、ピアノトリオと透明感のあるヴォーカルを中心に、北欧やロシアの民謡とジャズを結び合わせる美しい音楽が展開される。

副題に「A tribute to Jan Johansson」とある通り、今作はスウェーデンの伝説的ジャズピアニスト、ヤン・ヨハンソン(Jan Johansson, 1931 – 1968)へのトリビュート作品だ。

(1)「Visa från Rättvik」は伝統音楽をもとにヤン・ヨハンソンがアレンジ、その後スタンダードとなった曲。原曲はジャズと民謡の融合を試み、スウェーデン国内を中心に大ヒットし現在でも北欧ジャズの技術的・精神的な指針となっている名盤『Jazz På Svenska』(1964年)に収録されている。

(2)「Stepp, min stepp」は「ポーリュシカ・ポーレ」のタイトルでも知られる有名なロシア歌曲。冒頭、ピアノの単音でシンプルなテーマが提示されたあとすぐに即興パートとなるが、演奏が熱を帯びてきたところでよく知られたメロディーを歌う女声が遠くから聴こえてくる運びが素晴らしい。

他にも軽快なポルカ(3)「Visa från Järna – Lapp-Nils Polska / Berg-Kirstis Polska」、スキャットも素晴らしく、胸を締め付けるようなロシアの名曲(5)「Kvällar i Moskvas förstäder」(「モスクワ郊外の夕べ」「モスクワの夜は更けて」「すずらんの咲く頃」といった邦題でも有名)、モニカ・ゼタールンド(Monica Zetterlund)などの歌唱でも知られるスウェーデンの民謡(7)「Visa från Utanmyra」、リコーダーの素朴な音色に癒される(8)「Sinclairvisan」など選曲も演奏も素敵で、ヴォーカル・アンサンブルのクラシカルで美しいハーモニーとともに音楽を聴く喜びを存分に楽しめる。

(5)「Kvällar i Moskvas förstäder」

気鋭のヴォーカル・アンサンブル集団、Ensemble Edge

アンサンブル・エッジはデンマーク・オーフスで2016年に結成された現代的な声楽アンサンブル。総勢約20名ほどのメンバーで構成されており、古典音楽から実験的な音楽まで幅広く表現を行っている。

今回のプロジェクトはアンサンブル・エッジのディレクターであり、クラシック・チェリストのマーサ・マリー・ペトリ(Martha Marie Petri)と、ジャズ・ベーシストのマティアス・フレミング・ペトリ(Matthias Flemming Petri)の姉弟が発起人となって実現した。

姉弟がそれぞれ活躍する音楽の舞台はクラシックとジャズという違いがあるものの、ヤン・ヨハンソンへの敬意は共通のもの。2017年から始まったこのプロジェクトを通じて、悲劇的な交通事故死がなければ2021年には90歳を迎えていたはずのヤン・ヨハンソンの音楽が今も生きていることを再確認したという。

Karmen Rõivassepp – lead vocals
Calle Brickman – piano
Matthias Flemming Petri – double bass
Andreas Fryland – percussion, drums
Martha Marie Petri – cello
Michala Petri – recorder
Thomas Fryland – fluegelhorn
Mathias Skaarup Sørensen – Conductor

16 singers from ENSEMBLE EDGE

Ensemble Edge - Dimma
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