途轍もない表現力のピアノ弾き語り。ブラジルの70歳歌手シダ・モレイラの凄み

Cida Moreira - Um Copo de Veneno

歌手/女優シダ・モレイラの圧巻のソロ演奏『Um Copo de Veneno』

一度聴いたら忘れられない、圧倒的な表現力を誇るブラジルの歌手/ピアニストのシダ・モレイラ(Cida Moreira)。1951年生まれで、1977年からミュージカルや演劇で女優としてのキャリアを開始し、80年代からはMPBのカヴァーを中心に音楽活動も行なってきた実力派だ。

彼女の魅力はやはりなんと言っても舞台で鍛え上げてきた鬼気迫る表現力にある。ピアノを弾きながら、歌の世界観に没入し全身全霊で吐き出すように歌う姿は唯一無二で、70歳となった今も衰えるどころか益々凄みを増す。

2021年作『Um Copo de Veneno』は前編がシダ・モレイラによるピアノ弾き語り(一部ローズピアノも使用)のソロアルバム。取り上げている楽曲は(1)「Singapura」を除き彼女の初録音で、ブラジリアン・ロックの巨匠レニーニ(Lenine)の(4)「O Verbo e a Verba」、ノルデスチの鬼才シバ(Siba)の(9)「Marcha Macia」、英国のSSWマーク・ノップラー(Mark Knoppler)の(3)「Private Dancer」など幅広いが、どれも原曲のイメージを離れ完全にシダ・モレイラの孤高のステージのために用意された歌のようにさえ思える。
ソロというフォーマットだからこその、純粋な彼女の魂の芯に触れられるようなパフォーマンスは圧巻の連続だ。

ぐいぐいと彼女の世界に引き摺り込まれていき、30分間を聴き終わった頃にはこわばっていた緊迫感が徐々に解けていき、何か途轍もないものに触れてしまったという余韻が残る。

(7)「Você Me Vira a Cabeça」

Cida Moreira – piano, Rhodes piano

Cida Moreira - Um Copo de Veneno
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