パンデミックで孤立したピアニストが魂で歌うソロピアノ。ジョヴァンニ・ミラバッシ新譜

Giovanni Mirabassi - Pensieri isolati

Giovanni Mirabassi 『Pensieri isolati』

やはり、極めて才能のある音楽家にはソロというフォーマットが最適なのかもしれない。彼がこれまでに共演してきたベーシストやドラマーたちが凡庸というつもりは全くないが、彼のソロでのピアノ演奏を聴くと、彼以外の魂が演奏に介在しないときの音の研ぎ澄まされ方が明らかに違うのだ。

ジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)があの伝説的なソロピアノ名盤『Avanti!』から20年を経て録音したソロ作『Pensieri isolati』
『Avanti!』が世界を動かした過去の歴史的な瞬間を現代の視点からアプローチし切り取ったものだとすれば、今作は突如人類史にその姿を表し、ほんのわずかな時間で人々の生活や社会の在り方を激変させてしまった微小な感染性の構造体の行いに対する芸術家の自問的な行動の結果だ。

このアルバムはパンデミックで予定されていた数十の公演がキャンセルされる中、自省の日々に追い込まれたミラバッシがその状況を受け入れつつも、行き場のない感情を作曲とピアノにぶつけた極めて個人的・内省的なアルバムとなっている。だが、ミラバッシと同じように多くの人々が閉鎖空間に孤立する現代社会だからこそ、逆に共感を呼び起こす音がここにはある。
一聴して彼のものだと分かる短調の楽曲構造に、感情の赴くままに流麗に紡がれている耽美としか言いようのないアドリブのフレーズ。はっとするような転調も健在で、刺激も多い。

(1)「The Healing Waltz」

Giovanni Mirabassi プロフィール

ジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)は1970年、イタリア・ペルージャ生まれのピアニスト。10歳の頃にジャズに出会い、独学でピアノを始めた。現在はフランス・パリのマンモルトルを拠点に活動している。

2001年にリリースした『Avanti!』は世界各地の反戦歌や革命歌といった硬派なテーマのピアノ独奏作品だったが、ジャズの、しかもソロピアノのアルバムとしては異例の全世界で10万枚以上のセールスを記録。一躍彼の名を世界に轟かせる名盤となった。
実兄は人気ジャズクラリネット奏者のガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)。

Giovanni Mirabassi – piano

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