“トロピカリアの子どもたち”が創った現代MPB最重要作! Bala Desejo『SIM SIM SIM』

Bala Desejo - SIM SIM SIM

リオの気鋭音楽家4人による要注目グループ、Bala Desejo

ドラ・モレレンバウム(Dora Morelenbaum)、ジュリア・メストリ(Julia Mestre)、ルーカス・ヌネス(Lucas Nunes)、そしてゼー・イバーハ(Zé Ibarra)という現代リオデジャネイロのMPBシーンを代表する4人によって結成されたスーパーグループ、バラ・デゼージョ(Bala Desejo)
彼らのデビュー作『SIM SIM SIM』は、期待通り、いやそれ以上の驚くべき作品だった。

サウンドは1960年代後半のトロピカリアを彷彿させるようなブラジル伝統音楽、サイケロック、ラテン、レゲエなどのごった煮で、行き場を持て余す生命力に溢れている。それでいて芯には知的な詩情が流れており、代々受け継がれてきたブラジルの音楽の豊かさを象徴するような仕上がり。

まず(2)「Baile de Máscaras (Recarnaval)」からすぐに興奮の渦に飲み込まれてしまう。BPMは適度に速く、サンバとディスコ・ミュージックの入り混じったビートに大人数のストリングスやブラスの緻密なアンサンブル。スカのように裏拍で刻み続けるガットギター、さらにファンキーにカッティングを刻むエレクトリック・ギターも。幾層にも重なるコーラスは聴くものをどこまでも高みに連れていく。

(2)「Baile de Máscaras (Recarnaval)」
(2)「Baile de Máscaras (Recarnaval)」2022年4月29日のライヴ動画。

主にヴォーカルや各種上物楽器を担うBala Desejoの才能を存分に発揮させているのはベースのアルベルト・コンチネンチーノ(Alberto Continentino)、ドラムスのトーマス・ハレス(Thomas Harres)といったリズム隊が演出するグルーヴの力も大きい。

大袈裟かもしれないが、特に(5)「Dourado Dourado」などを聴くと、彼らは21世紀のノヴォス・バイアーノス(Os Novos Baianos)かもしれないな、と思った。
もしかしたら、ブラジルの音楽史に刻むべき名盤かもしれない。

ノスタルジックな8mmフィルムでの映像も素敵な(5)「Dourado Dourado」のMV

ブラジル音楽の次代を担う4人の才能

ドラ・モレレンバウムはリオデジャネイロ生まれのSSW。2020年にシングル『Dó a Dó』でデビュー。父親はアントニオ・カルロス・ジョビンやカエターノ・ヴェローゾ、坂本龍一らと活動を共にしたチェロ奏者ジャキス・モレレンバウム。

同じくリオデジャネイロ出身のSSW、ジュリア・メストリは2014年にカエターノ・ヴェローゾやレニーニ、エミシーダといったビッグネームとともに、ブラジルの豊かな熱帯雨林保護を訴えたプロジェクト“The Floresta da Tijuca Sessions”の「I’m Alive」の楽曲制作に参加。ドラ・モレレンバウムら今作のメンバーの協力も得て2019年にデビューアルバム『Geminis』をリリースしている。

ルーカス・ヌネスは2021年に大きな話題を呼んだカエターノ・ヴェローゾの新作『Meu Coco』で録音エンジニアや共同プロデューサー、キーボード、ギター、ベースなども手がけた気鋭の音楽家。カエターノの未子トン・ヴェローゾも在籍するバンド、ドニカ(Dônica)のメンバーでもある。

ゼー・イバーハもDônicaのキーボード奏者/ヴォーカリスト。ガル・コスタの2021年作『Nenhuma Dor』にゲストシンガーとして参加するなど、やはり近年際立った活躍を見せる。

以上のとおり、Bala Desejoの各メンバーそれぞれがまさしくMPBの次代の申し子たちと言える。
よく見ると今作の一部のアレンジャーにジャキス・モレレンバウムの名があったりと音楽面にもその遺伝子は直接作用しているようだ。世代間で受け継がれ、絶え間なく発展し続けるブラジル音楽の脈流を眺めることができる怪作。

(4)「Clama Floresta」

Bala Desejo :
Dora Morelenbaum – vocal, metalofone, acoustic guitar
Julia Mestre – vocal
Lucas Nunes – vocal, acoustic guitar, electric guitar, lap steel guitar, organ, Rhodes, piano, theremin
Zé Ibarra – vocal, acoustic guitar, electric guitar, Wurlitzer, Rhodes, piano, theremin, flute

Alberto Continentino – bass
Thomas Harres – drums
Daniel Conceição – percussion
Marcelo Costa – percussion
Thomas Harres – percussion
João Felippe – cavaquinho
Tim Bernardes – electric guitar
Danilo Sinna – alto saxophone
Gilberto Pereira – alto saxophone, baritone saxophone
Marcelo Martins – tenor saxophone, flute
Gilmar Ferreira – trombone
Marlon Sette – trombone
Jessé Sadoc – trumpet
Diogo Gomes – trumpet
Michel Bessler – violin
Pedro Mibielli – violin
Suray Soren – violin
Angelo Dell”Orto – violin
Fernando Pereira – violin
Leonardo Fantini – violin
Andréia Carizzi – violin
Antonella Pareschi – violin
Thiago Teixeira – violin
Léo Ortiz – violin
Rogério Rosa – violin
Carol Panesi – violin
Diego Silva – viola
José Ricardo Taboada – viola
Bernardo Fantini – viola
Victor Botene – viola
Iura Ranevsky – cello
Cláudia Grosso – cello
Gabriela Sepulveda – cello
Daniel Silva – cello
Jaques Morelenbaum – arrange

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