リオの若きSSW、ヘナート・ノヴァエス新譜
ブラジルのシンガーソングライター/ギタリスト、ヘナート・ノヴァエス(Renato Novaes)の新譜『Canções de Fim de Tarde』は、バラードを中心にメロディーやハーモニー重視の良質なMPBを詰め込んだ良作だ。
アルバムにはクリストヴァン・バストス(Cristovão Bastos)やジャキス・モレレンバウム(Jaques Morelenbaum)、ジョアン・リラ(João Lyra)といった重鎮も参加。曲ごとに様々な演奏者が参加し、音楽芸術への愛情が溢れた素晴らしい世界観が詰め込まれている。
(1)「Alma do Interior」ではコーラスグループのGrupo Vocal Equaleやパーカッションの巨匠ホベルチーニョ・シルヴァ(Robertinho Silva)をフィーチュア。オープニングにふさわしく、知的で広がりのある音楽観を提示する。
ファルセットも含めて美しいヴォーカルが堪能できる良曲(2)「Aquela Flor」、チェロの巨匠ジャキス・モレレンバウムが参加した(3)「Peixe Negro」、クリストヴァン・バストスがピアノを弾き、総勢12名の弦楽隊と奏でる(4)「Ela」など、夢心地の美しい楽曲が連なる。
アルバムの構成も一貫性があり、美しいサンバ(9)「Girei o Mundo」から(10)「Um Conto」への美しい流れ、そしてアルバムの始まりと終わりを彩る祈るような鐘の音色や鳥達の歌声にも心が洗われる。
国際的な知名度はまだ低いものの、メロディーやハーモニーの美しさを重視したアレンジ・作風が心地よく、どこまでも音楽の素晴らしさに浸らせてくれる、そんな素晴らしい音楽家だ。
Renato Novaes
ヘナート・ノヴァエスはリオデジャネイロを拠点とするSSW。2018年にアルバム『Área de Refúgio』でデビュー。メロディアスで抒情的、ときにノスタルジックな表現を得意とし、多くの著名ミュージシャンからのサポートを得るなど才能を発揮している。
シコ・ブアルキ(Chico Buarque)、アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)、ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)、イヴァン・リンス(Ivan Lins)、ベト・ゲヂス(Beto Guedes)らを音楽的な影響源として挙げている。