ショーロの真髄を伝えるバンド、Abrideira
ジョアナ・ケイロス(Joana Queiroz)やマリア・ベラルド(Maria Beraldo)らが参加するブラジルのショーロバンド、Abrideira。この6人組の唯一の作品となったセルフタイトルのアルバム『Abrideira』が2021年に再発された。
このアルバムは2009年にリリースされていたものだが、ドラマー/パーカッション奏者のルーカス・ダ・ホーザ(Lucas da Rosa)の早すぎる死によってバンド活動は中断。その後ジョアナ・ケイロスの“ミナス新世代”絡みの活躍や、ジョアナと共にクアルタベー(Quartabe)で攻めた演奏を聴かせるもう一人のクラリネット奏者マリア・ベラルドらの名前はここ日本でも広く知られることとなったが、今作はルーカス・ダ・ホーザへの追悼の意を込めてのサブスクでの再発ということらしい。
収録されている曲はメンバーによるオリジナルのほか、ハダメス・ジナタリ(Radamés Gnattali)の(2)「Obrigado, Paulinho」やサントス・ボコット(Santos Bocot)の(5)「Ciúme É Brincadeira」、ジェイミ・ヴィグノリ(Jayme Vignoli)の(6)〜(8)「Suíte Botequiana」、マウリシオ・キャリオ(Maurício Carrilho)の(11)「Choro pra Maria」、そしてイチベレ・ズヴァルギ(Itiberê Zwarg)の(12)「Faz Que Não Vai Mas Vai」といった知られざるショーロ界隈の新旧の巨匠の楽曲も取り上げている。
アレンジは知的かつ丁寧で、大衆化・陳腐化するポピュラー音楽とは対極の進化を見せるショーロという音楽の優れた一面を十二分に伝える内容となっている。短調と長調の効果的な往来や、複数のメロディが同時並行で組み込まれた対位法的な作曲技法、それらがアンサンブルの中で効果的に絡み合ってリアルタイムで構築されていく即興の醍醐味などは、やはり他の音楽では代え難いショーロの魅力である。
Abrideira :
Maria Beraldo – clarinet
Joana Queiroz – bass clarinet, clarinet
André Ribeiro – bandolim
Eduardo Lobo – 7 strings guitar
Lucas da Rosa – drums, percussion
Danilo Penteado – cavaquinho, electric bass