ただの“UKジャズ良盤”ではない、Neue Grafik Ensemble 新譜に込められた切実な願い

Neue Grafik Ensemble - Foulden Road Part II

Neue Grafik Ensemble 『Foulden Road Part II』

サウスロンドンを拠点とする鍵盤奏者/プロデューサーのノイエ・グラフィック(Neue Grafik)のバンド、Neue Grafik Ensembleが新作『Foulden Road Part II』をリリースした。今作は2019年の『Foulden Road』の続編となる作品で、即興演奏やグルーヴの喜びに満ちているが、その底流には重いテーマを掲げる。

MA.MOYOによるスポークン・ワードで幕を開ける(1)「Black Bodies」は、2016年にフランスで起こったある黒人男性の死亡事件をテーマにしている。その黒人男性、アダマ・トラオレ(Adama Traoré)氏は彼の24歳の誕生日のその日にパリ郊外で警察官に身を押さえつけられ、警察車両の中で意識を失い、その後警察署で死亡が確認された。この事件はフランスで人種差別として大規模な抗議運動を呼び、さらに2020年に米国で発生し世界的な抗議運動に発展した類似の事件とも呼応し激しいデモに発展している。

その1曲目からリレーのように繋がれる(2)「Queen Assa」はアダマ・トラオレ氏の死亡事件をきっかけに人権活動家となったアダマの姉、アッサ・トラオレ(Assa Traoré)氏に捧げられている。重いが、躍動感のあるビートに力強いブラス、幻想的なシンセは生命力の強さを表しているようだ。

(3)「Step to It」にはロンドンのラッパー、ロード・アペックス(Lord Apex)がゲスト参加。(4)「Breath」にはジャーナリストのJJ Akinladeがスポークン・ワードで参加し、この一連の流れは(5)「For Adama」で鎮魂の祈り、より良い世界への想いとして体現される。

──だが、物語はもちろんここまでで終わりではない。続く(6)「Officer, Let Me Go to School」、そしてBrother Portraitを迎えた(7)「Running on a Flame」の流れに、ノイエ・グラフィックのストーリーテラーとしての恐ろしいほどの才能を感じさせる。

(6)「Officer, Let Me Go to School」
(7)「Running on a Flame」
Neue Grafik Ensemble - Foulden Road Part II
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