グローバル規模で混ざり合うJazzの途上、『Our Folklore』
スイス出身のギタリスト、ルイ・マトゥテ(Louis Matute)の新作『Our Folklore』が登場した。全曲がルイ・マトゥテの作曲で、既にスイス随一といわれるギター演奏技術だけでなく、ブラジル音楽やスムースジャズ、ネオソウルなど様々な音楽から影響を受け自然と自身の音楽に取り込んでいった彼の作曲能力の高さも窺わせる内容だ。
若手を中心としたバンドは最大7人編成で、サックスやトランペット、さらに特徴的な要素としてはチュニジアのウード奏者アミン・ムライヒ(Amine M’Raihi)が数曲で参加している。フランスのピアニスト、アンドリュー・オードジェー(Andrew Audiger)も随所で光るプレイを見せており、楽曲自体の叙情性と親しみ易さをバンドの鉄壁のアンサンブルが支える。
(1)「Renaissance」や(6)「Macondo」(──マコンド…!!ガルシア・マルケスの世界的名作『百年の孤独』に登場する街の名前だ)といったウードがフィーチュアされた楽曲では北アフリカや中東音楽のエッセンスも加わり、それが楽曲になんとも言えない洗練された味わいを与えている。
ブラジル北東部の伝統的な音楽、バイアォンのリズムを取り入れた(7)「For All These Real Stars」、北欧的な抒情性が胸に響く標題曲(9)「Our Folklore」、微分音も自在なウードが醸す中東音楽、ブラジル的なリズム、欧州的なセンスがハイレベルで混在する(11)「Zikra」など後半も素晴らしい曲・演奏が並ぶ。
まだまだ無名の音楽家だが、このルイ・マトゥテという作曲家/ギタリストは実力、独自性ともに注目に値する。これからどんな音楽を聴かせてくれるか楽しみだ。
Louis Matute プロフィール
スイス出身のルイ・マトゥテは2013年にクラパレード大学の音楽賞を受賞し、ジャズの道へ。ウォルフガング・ムースピールやリオーネル・ルエケから手解きを受け、2016年にはリオデジャネイロとサンパウロで開催されたモントルージャズフェスティバルの50周年を記念して開催されたスイス・ミーツ・ブラジル・フェスティバルにも出演した。
2018年と2020年には自身のカルテットを率いて2枚のアルバムをリリース。現在もっとも注目すべきギタリストとしてその存在感を強めている。
Louis Matute – electric guitar
Amine M’Raihi – oud
Léon Phal – tenor saxophone
Zacharie Ksyk – trumpet
Andrew Audiger – piano, keyboards
Virgile Rosselet – double bass
Nathan Vandenbulcke – drums