カタルーニャのアーティスト、ジェンマ・ウメット新譜
スペイン・カタルーニャのSSWジェンマ・ウメット(Gemma Humet) の新譜『Rere tot aquest fum』がリリースされた。2020年作『Màtria』以来のソロ4枚目のアルバムとなる今作は、サウンド的にはよりエレクトロニックの比重を増しつつ、これまでと変わらない魔力を秘めた彼女の“声”を堪能できる独特の世界観を持った作品となっている。
オーガニックなイメージのあったジェンマ・ウメットだが、今作ではアナログ・シンセサイザーや打ち込みの比重も増しているようだ。MVも公開された(5)「Tòxics」などはその顕著な例で、ジェンマ・ウメットの特異なヴォーカルをアナログシンセのアルペジオや四つ打ちのビートが際立たせる。
アルバムは(1)「Com vols que et parli jo de l’amor?」で幕を開ける。これは「愛についてどう話してほしい?」と尋ねるようなタイトルだが、冒頭でその詞を歌ったあと、次の節では“あなたをどう愛すればよいか分からない”と告白するような歌詞が続く。そうしてジェンマ・ウメットは分かりそうで分からない、矛盾に満ちた世界を生々しく描き出していく。
これは前作『Màtria』で詩的なテーマを開花させた彼女が進化し至ったリアルな現在地だし、単に卓越した個性を持ったヴォーカリストではなく、人生を赤裸々に曝け出し、確固たる世界観を示す“アーティスト”としての自身を示した輝かしい標石だ。
(8)「Els anys guanyats」はゲストに人気グループGinestàの歌手パウ・セラソルサス(Pau Serrasolsas)をフィーチュア。彼女のアルバムでは珍しい男女デュエットを披露している。
Gemma Humet 来歴
1988年にカラルーニャ州テラッサに生まれたジェンマ・ウメットは2015年に若手ギタリストのパウ・フィゲレス(Pau Figueres)をフィーチュアした『Si canto enrere』でデビュー。2018年にはカタルーニャを代表するギタリストのトティ・ソレールとの双頭名義で『Petita Festa』を発表し、同地の豊かな現行音楽シーンを担う逸材として広く注目された。
2020年の『Màtria』では電子音楽のエッセンスを取り入れ、母性や自由をテーマに、アーティストとしてより個性を表出させた。