ダゲスタン共和国出身のケマンチェ奏者マーク・エリヤウ
ダゲスタン共和国出身の人気ケマンチェ奏者/サズ奏者/作曲家マーク・エリヤウ（Mark Eliyahu）の2022年新譜『About Love』は、いわゆるワールドミュージック/グローバルミュージックを聴き慣れない人にも入りやすく、おすすめできる一枚だ。
ヴァイオリンの源流である、中東の伝統的な擦弦楽器「ケマンチェ」の専門家であるマーク・エリヤウの音楽は西洋音楽の親しみやすさと、（西洋的な価値観においては）謎めいた中東音楽の神秘性が見事に一体化しており、多くのリスナーにとって新たな音楽体験をもたらす。
本作のベースとなっているのは西洋音楽の音楽理論だ。明快なコードやリズムは西洋音楽そのものだが、ケマンチェやヴォーカリストが担当する旋律は中東的な節回しに則っており、新鮮な感覚を味わえる。
ケマンチェやサズに寄り添うピアノの音は最近流行りのアンビエント感覚を強調した録音で、広がりのあるシンセパッドも重ねるなど雰囲気を重視した繊細な音作りも良い。
(6)「Derinlerde」にはトルコの歌手ジェム・アドリアン（Cem Adrian）が、そして幾分ラテン要素も混ざった(10)「Mahur」には父親のパリス・エリヤウ（Paris Eliyahu）がゲスト参加している。
Mark Eliyahu 来歴
マーク・エリヤウ（Mark Eliyahu）は1982年にロシア連邦のダゲスタン共和国で生まれた。
1989年に両親とともにイスラエルに移住し、16歳のときに出会ったアゼルバイジャンの著名なケマンチェ奏者であるハビル・アリエフ（Habil Aliyev）の演奏に魅了され、アゼルバイジャンに移住しケマンチェ奏者としての鍛錬を積んできた。
現在はイスラエルを拠点とし、中近東各国を中心に幅広く演奏活動を行なっている。