天才的な閃きを連発するアゼリ・ジャズの神童シャヒン・ノヴラスリ『Bayati』

Shahin Novrasli - Bayati

Shahin Novrasli 『Bayati』

アゼルバイジャンのピアニスト、シャヒン・ノヴラスリ(Shahin Novrasli)の2014年作 『Bayati』がサブスク解禁された。編成は長年活動をともにしていたオハイオ州出身のベーシストのネイサン・ペック(Nathan Peck)と、フィラデルフィア出身のドラマー、アリ・ホーニグ(Ari Hoenig)を従えてのピアノトリオ。正確無比かつ高速で回る指で、アゼルバイジャン独特のジャズ=ジャズ・ムガームの旋法も取り入れたエキサイティングな演奏を聴かせてくれる作品だ。

まず最初の衝撃は(2)「1001 Nights」でやって来る。世界的に知られるイスラムの物語(“千夜一夜物語”や“アラビアンナイト”という邦題が有名)を題材とした曲で、シャヒンの両手から繰り出される高速のパッセージが圧巻。続くショパンの(3)「Prelude in E Minor」を挟んでの(4)「Bayati Shiraz」は10分半に及ぶ抒情詩で、彼が“ムガームジャズの始祖”ヴァギフ・ムスタファザデの系譜を継ぐピアニストの筆頭であることを知らしめる。

(2)「1001 Nights」のライヴ演奏動画

バラード(7)「Elinde Sazin Qurbani」で幸せなクールダウンを演じたかと思えば、一転し聴き慣れないフレーズを連発するアゼルバイジャン歌曲を元にした(8)「Baga Girdim Uzume」での演奏も冴える。

商業音楽として作り込まれた作品ではないかもしれないが、天才的な閃きに満ちた優れた作品だ。

ジャズを選択したクラシックピアノの“神童”

1977年、アゼルバイジャンの首都バクーに生まれたシャヒン・ノヴラスリは幼少期よりクラシックのピアニストとしてその才能を発揮した。11歳で地元の交響楽団と共演しバッハやベートーベン、モーツァルト、ショパンなどを演奏するなど、神童として将来を期待された逸材だった。

しかしその後、バクーが東欧最大のジャズの都として栄えていく中で出会ったアゼルバイジャンの伝統音楽とジャズを融合させた“ムガームジャズ”の創始者であるヴァギフ・ムスタファザデ(Vagif Mustafazadeh)や、ジャズを志すピアニストなら誰もが憧れるキース・ジャレット(Keith Jarrett)といった音楽に多大な影響を受け、いつしかジャズピアニストとしての道を歩むことに。

2017年にフランスのレーベル、Jazz Village, PIASから『Emanation』を発表。クラシックやモダンジャズ、そしてムガームジャズといった影響下にある独特の音楽性で注目を浴びることになった。

Shahin Novrasli – piano
Nathan Peck – bass
Ari Hoenig – drums

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