クラシックギターの美しさを堪能する、Plínio Fernandes デビュー作
ブラジルのクラシック・ギタリスト、プリニオ・フェルナンデス(Plínio Fernandes)のデビュー作『Saudade』は、豊かな音楽文化を誇るブラジルの様々な時代の名曲たちを瑞々しい感性で嫋やかに聴かせる美しいソロギター作品だ。
ここで取り上げられている曲はジャコー・ド・バンドリンの(1)「Assanhado」、アントニオ・カルロス・ジョビンの(2)「イパネマの娘」、エドゥ・ロボとシコ・ブアルキによる(3)「Beatriz」、アリ・バホーゾの(4)「ブラジルの水彩画」…などなど、まさしく“ブラジルの心”と呼ぶべき珠玉の音楽たち。繊細な指先で弦を弾くプリニオ・フェルナンデスという若きギタリストの鮮烈なデビュー作といっても過言ではないだろう。
アルバムはほとんどソロ・ギターで構成されているが、数曲にゲストが参加している。
ヴィラ・ロボスの(6)「Bachianas brasileiras No. 5」では“世界で最も音楽的な一家”と称えられクラシック界に旋風を巻き起こす英国の7人兄弟の3番目であるチェリスト、シェク・カネー=メイソン(Sheku Kanneh-Mason)が、セルジオ・アサドの(18)「Menino」 にはカネー・メイソン兄弟の2番目ブライマ・カネー=メイソン(Braimah Kanneh-Mason)が参加し、歌心溢れる美しい演奏を披露。
さらに(13)「O Mundo É Um Moinho」ではブラジルの国民的歌手マリア・ヒタ(Maria Rita)が思慮深く慈しみのあるヴォーカルを聴かせてくれる。
本作が素晴らしいソロギター作品であることは、いまさら言うまでもない。
そんな中で、チリのフォルクローレの音楽家であり、歌を通じた社会変革を目指したヌエバ・カンシオン(新しい歌)運動の先駆者として知られ、悲劇の死を遂げたビオレータ・パラ(Violeta Parra)の(16)「Gracias a la vida」という選曲が殊更存在感を放っていることは付け加えておきたい。
Plínio Fernandes – guitar
Guests :
Maria Rita – vocal (13)
Sheku Kanneh-Mason – cello (6)
Braimah Kanneh-Mason – violin (18)