伝説的ヴァイオリン奏者にインスパイアされた新譜『Legend』
ポーランドのジャズ・ヴァイオリン奏者/作曲家アダム・バウディヒ(Adam Baldych)が、自身のクインテットに加えゲストにクラシック・ヴァイオリン奏者アガタ・シムチェフスカ(Agata Szymczewska)を迎え制作した新譜『Legend』。今作ではポーランドのヴァイオリン奏者/作曲家ヘンリク・ヴィエニャフスキ(Henryk Wieniawski, 1835 – 1880。若手ヴァイオリン奏者の登竜門であるヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールにその名を冠する伝説的な音楽家)からインスピレーションを受けアダム・バウディヒによって作曲された楽曲たちが収められており、現代最高のヴァイオリニストによる豊潤な響きを讃えた演奏をたっぷりと味わうことができる。
今作で唯一、(5)「Variations on an Original Theme [Maestoso]」はヘンリク・ヴィエニャフスキによって書かれたモチーフをほぼそのまま引用、提示し、次のヴァリエーション(6)「Variations on an Original Theme」へと発展させてゆく。
アダム・バウディヒは通常のヴァイオリンのほか、ここ数年ほぼメイン楽器として扱っている一回り大きなルネサンス・ヴァイオリンを多用。ヴィオラよりもさらに低い調弦の楽器の響きはどこまでも深淵で美しく、どこまでも魅力的だ。ゲストとして迎えられたアガタ・シムチェフスカはソロを取るわけではなくあくまで“第二ヴァイオリン奏者”として補助的な役割を果たし、随所でさりげなく光るプレイを聴かせるクインテットのサックス奏者マレク・コナルスキ(Marek Konarski)らとともにアダム・バウディヒの神懸り的な演奏を的確にサポートしている。
アダム・バウディヒ 略歴
アダム・バウディヒは1986年ポーランド西部の都市ゴジュフ・ヴィエルコポルスキに生まれた。
ヴァイオリンは9歳の頃から学びはじめ、13歳でジャズに傾倒、16歳の頃よりプロとしての活動を始め“ジャズヴァイオリンの革新者”として世界にその名を轟かせた。
2012年に権威あるドイツのレーベル、ACT MUSICからデビュー作『Imaginary Room』を発表。これまでにヤロン・ヘルマン(Yaron Herman)、ヘルゲ・リエン(Helge Lien)、イーロ・ランタラ(Iiro Rantala)など多数の名手たちと共演。ヴァイオリンという楽器が持つポテンシャルを限界まで高める圧倒的な表現力を備えた現代最高峰の演奏家として評価されている。
数年前から通常のヴァイオリンよりも一回り大きく、7度ほど低く調弦されたルネサンス・ヴァイオリンを演奏に多用するようになっており、『Clouds』(2020年)や『Poetry』(2021年)でもその豊かな音色を楽しむことができる。
Adam Baldych – violin
Marek Konarski – tenor saxophone
Łukasz Ojdana – piano
Michał Barański – contrabass
Dawid Fortuna – drums
Agata Szymczewska – violin