ブラジルと米国に橋を渡すシンガー、アレクシア・ボンテンポ新譜
ブラジルと米国を股にかけるシンガー、アレクシア・ボンテンポ(Alexia Bomtempo)の新譜『Doce Carnaval』は、彼女らしくサンバやボサノヴァといった良質なブラジル音楽を軸に、適度なポップ感覚と国際的な発信力でバランスをとった良作に仕上がっている。タイトルの“甘美なカルナヴァル”が示すように、全編を通じてどこか気怠さが漂う最高に心地良いアルバムだ。
今作はゲストもすごい。
フィリップ・バーデン・パウエル(Philippe Baden Powell)らが作曲する明るさの中にサウダーヂの感覚を含んだ(1)「Chameleon Lovers」ではレッド・ホット・チリ・ペッパーズの元ギタリスト、ジョシュ・クリングホッファー(Josh Klinghoffer)が参加。
続く(2)「Banho de Cheiro」にはホベルタ・サー(Roberta Sá)、 (3)「Domingo」にはフェルナンダ・アブレウ(Fernanda Abreu)とブラジルを代表するシンガーが参加し、現代的なボサノヴァを歌う。
カルリーニョス・ブラウン(Carlinhos Brown)作曲の(4)「Rapunzel」には緻密な室内楽風アレンジが施され、御伽噺にいくつかの装飾をまぶしていく。
(5)「La nuit des masques」はシコ・ブアルキ(Chico Buarque)の名曲「Noite dos Mascarados(仮面の夜)」だが、これをカヴァーしたピエール・バルー(Pierre Barouh)によるフランス語バージョンを、ピエールの娘マイア・バルー(Maïa Barouh)とアレクシアが歌うというファンには感慨深い演出。リハーモナイズこそ施されていないものの、原曲をより豪華にアレンジし演奏された印象的なトラックに仕上がっている。
Alexia Bomtempo 略歴
アレクシア・ボンテンポはブラジル人でコンサート・プロモーターの父と、アメリカ人の母の間にワシントンD.C.で生まれ、成長の過程で米国とブラジルの両方に住み、ブラジルのポピュラー音楽やボサノヴァ、ロック、フォーク、ジャズなどを聴きながら育った。
ニューイングランドで3年間声楽を学んだあとリオデジャネイロに戻り、2008年にダヂ(Dadi)のプロデュースのもとアルバム『Astrolábio』でデビューし評判となった。その後もサンバ、ボサノヴァ、MPB、トロピカリアなどルーツを追求しつつ、アメリカン・ソングブックのあまり知られていない楽曲についても研究を深めるなど、ブラジルと英語圏をつなぐ活動で定評を得ている。