気鋭サックス奏者/SSWブラクストン・クック、個性的な視点で描く現代社会と愛

Braxton Cook - Black Mona Lisa

ブラクストン・クック新作『Black Mona Lisa』

米国のサックス奏者/シンガー/作曲家のブラクストン・クック(Braxton Cook)が新作EP『Black Mona Lisa』をリリースした。R&Bとジャズを柔らかく繋ぎ、独特の視点で紡がれる物語と音楽がよく調和した作品となっている。

(1)「Statistics」は50%の夫婦はうまくいかず離婚するという“統計学”への抗いをテーマとしており、長い交際期間を経て2021年に政治学者のチャヤ・クラウダー(Chaya Yvonne Crowder)と結婚したばかりの彼が、40年後の夫婦の関係を振り返るという視点で描かれた素晴らしいラヴソングで、シンガーソングライターとしてのブラクストン・クックの魅力が最大限に引き出されている。

(1)「Statistics」

ナット・キング・コールの「Mona Lisa」にインスパイアされたという(2)「Black Mona Lisa」。曲名に加えられた“Black”については、米国における黒人がこれまでに行ってきた文化的貢献のほとんどと同様に、黒人女性の外見的な特徴が望ましい外観の新たな基準になり始めていることを実感しているからだという(補足するとすれば、黒人女性が主人公となる『リトル・マーメイド』などは最も象徴的な出来事だろう)。

(3)「The Same」は魅力的なハーフディミニッシュ(m7♭5)のコードが多様された楽曲で、互いに異なる個性を持つパートナーとの違いを認め、そうした違いがあるからこそ物事を楽しくし、新鮮な関係を保てるという逆説的なテーマで描かれた楽曲。

(4)「MB」は偶然にも同じイニシャルを持つ二人の人物が関係する。
一人はブラクストン・クックの友人でドラマーのモーゼス・ボイド(Moses Boyd)で、彼が送ってくれた魅力的なドラムループが楽曲の即興演奏のインスピレーションの源泉となった。
その数週間後、16歳の黒人の少女マキア・ブライアント(Ma’khia Bryant)が警察によって銃殺されたというニュースが流れると、ブラクストンはこれまでに世界中で警察の手によって殺された黒人の命に捧げるために楽曲を完成させた。

(4)「MB (For Ma’khia Bryant)」

ラストは(5)「Let Go」。人は手に負えない問題を抱え、どうしようもないストレスを抱えたとき、“Let Go and Let Go God(手放し、神に任せる)”という考えを持つべきだという教えに基づいた楽曲である。これは誰もが知るべき自己防衛の手段なのだ。

Braxton Cook 略歴

ブラクストン・クックは1991年マサチューセッツ州ボストン生まれ。幼少期をメリーランド州グリーンベルトで育ち、東海岸を何度か移動した後、彼の家族はメリーランド州シルバースプリングに定住した。ブラクストンはそこで著名な音楽教育家であるポール・カー(Paul Carr)のもとでサックスを学び、高校卒業後にワシントンD.C.のジョージタウン大学に進学すると定期的にジャズクラブで演奏を行い徐々に名声を獲得。2011年に音楽のキャリアに専念することを決めジュリアード音楽院に転籍すると、そこでクリスチャン・スコット(Christian Scott)に才能を見出され、彼のバンドで多くの経験を積むことになる。

2017年にデビューアルバム『Somewhere In Between』をリリース。Fader Magazineは彼を評して“Jazz Marvel(ジャズの驚異)”、“Jazz Prodigy(ジャズの神童)”と絶賛した。

Braxton Cook – alto saxophone, vocal, guitar, keyboards
Andrew Renfroe – guitar
Paul Cornish – piano
Henoc Montes – electric bass
Joshua Crumbly – acoustic bass
Jonathan Pinson – drums
Curtis Nowosad – drums

Braxton Cook - Black Mona Lisa
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