ノアム・クラインシュタインの印象的なデビュー作
イスラエルのシンガーソングライター、ノアム・クラインシュタイン(Noam Kleinstein)のデビューアルバム『Noam Kleinstein』。父親譲りの洗練されたソングライティング、母親譲りの表現力、若者らしい瑞々しく希望に満ちた感性と、それと同様に若者らしい不安な気分とアンニュイな雰囲気を兼ね備えた不思議なフィーリングで、新たな才能の登場を強く印象付ける傑作となっている。
収録された楽曲は彼女が15歳の頃から書き続けてきたオリジナルで、どれも個人的な体験から得られたエピソードがもとになっている。人気音楽家を両親に持ち音楽に溢れていたであろう家庭環境を思うと、これほどの優れた音楽を自然に生み出す才能は驚くことではないかもしれないが、その実力は決して親の七光りではなく本物だ(事実、私もこのアルバムを聴いてから純粋にその歌に惹かれ、彼女のことを調べてみて初めて両親が人気音楽家であることを知った)。
アルバムはヴォーカルの多重録音によって豊かなハーモニーを奏でる(1)「שיר תפילה(祈りの歌)」で幕を開ける。2曲目以降の収録曲も全体的にシンプルながらツボを押さえた編曲で、ノアム・クラインシュタイン自身によるピアノを中心とした控えめなバンドサウンドが主体となっており、細部にこだわりながらも余計な装飾を施さない哲学を感じさせるサウンドがとても心地よい。三拍子系のリズムの多用も印象深く、柔らかく繊細な表現者としての魅力が詰まった一枚だ。
両親ともに人気SSW、イスラエルの新星Noam Kleinstein
ノアム・クラインシュタイン(ヘブライ語:נועם קלינשטיין)は2001年生まれ。彼女の父親ラミ・クラインシュタイン(Rami Kleinstein, 1962 – )は1980年代から活躍する人気シンガーソングライターで、ノアムの母親であり歌手/女優のリタ(Rita, 1962 – )と公私のパートナーとして数多くのヒット曲を世に送り出した。姉のメシ・クラインシュタイン(Meshi Kleinstein, 1991 – )も歌手。
幼少期から子役声優として様々な映画の吹き替えを担当するなど活躍。シンガーソングライターとしては2019年に最初のシングル『הנה הוא חוזר』でデビューを飾っている。