歌手リヴィア・ネストロフスキ&ピアノ奏者エンヒキ・アイゼンマンのデュオ作
ブラジル出身のピアニスト、エンヒキ・アイゼンマン(Henrique Eisenmann)と、ブラジル系米国人の歌手リヴィア・ネストロフスキ(Lívia Nestrovski)のデュオによる2022年新作『Nação』は、ブラジル音楽をこよなく愛する二人が祖国を代表する音楽家たちの名曲を中心に表現力豊かに演奏した名作だ。
ギンガ(Guinga)作曲の(1)「Sete Estrelas」、エルメート・パスコアールの「Ursula」からガル・コスタの歌唱で知られるパラグアイの詩人/音楽家マヌエル・オルティス・ゲレーロ(Manuel Ortiz Guerrero)の名曲「india」の意外なメドレーである(3)、A.C.ジョビンの(8)「Insensatez」、ミルトン・ナシメントの(9)「Milagre dos Peixes」などなど、実にブラジルらしい自然かつ高度なクオリティの声とピアノで際立つ。
どの曲も創造力と詩的な感性をそのまま何ら技術的な欠落なく音楽に落とし込んだ名演で、“声とピアノ”の名盤数多いブラジルの中でも随一の素晴らしさだ。人間の声の魅力を最大限に引き出すリヴィアと、まるでピアノを自分の頭脳そして手足同様に自由に弾くエンヒキ(彼の表現力はアンドレ・メマーリにも比肩する)の息も完璧に同期しており、カヴァー曲は新たな魅力で輝く。どの曲も本当に素晴らしいが、個人的には(9)「Milagre dos Peixes」の奇跡のような美しさが強く印象に残る。
プロフィール
リヴィア・ネストロフスキ(Lívia Nestrovski)は1988年アメリカ合衆国アイオワ州生まれ。サンパウロ州立交響楽団の芸術監督で作曲家/ギタリストのアルトゥール・ネストロフスキ(Arthur Nestrovski)を父に持ち、親子共演アルバム『Pós Você e Eu』(2016年)や『Sarabanda』(2020年)も高く評価されている、ブラジルの現代を代表する歌手。
エンヒキ・アイゼンマン(Henrique Eisenmann)はブラジル・サンパウロ生まれ。コンテンポラリージャズ、クラシック、ブラジル音楽といったジャンルを境界を越え様々な音楽の響きを一台のピアノで表現する芸術家で、歌手や器楽奏者だけでなくダンサー、詩人、俳優など、あらゆる分野のアーティストとのユニークなコラボレーションでも注目されている。現在はジュリアード音楽院の教員としても活躍。
Lívia Nestrovski – vocal
Henrique Eisenmann – piano