ウルグアイ初のアカデミー賞受賞SSWホルヘ・ドレクスレル、多様な個性とコラボした新作『Tinta y Tiempo』

Jorge Drexler - Tinta y Tiempo

ホルヘ・ドレクスレル新作は時代の流れに即した最高のポップス

アカデミー歌曲賞の受賞など、ウルグアイを代表するシンガーソングライターであるホルヘ・ドレクスレル(Jorge Drexler)が新作『Tinta y Tiempo』をリリースした。ウルグアイ、スペイン、イスラエル、パナマからゲストを迎え、彼らしい柔らかな歌と巧みなソングライティング、そして現代的なサウンドで2022年を代表すると言っても過言ではない素晴らしいアルバムに仕上がっている。

(1)「El Plan Maestro」はパナマ共和国を代表するSSWルベーン・ブラデス(Rubén Blades)がゲスト参加。室内楽的な丁寧な弦楽アレンジ、現代的な前半部から場面転換しフォルクローレが顔を覗かせる中間部など豊かな展開とホルヘの柔和な歌声が非常に魅力的だ。

スペインの若手ラッパー、セー・タンガナ(C. Tangana)をフィーチュアした(4)「Tocarte」はエッジの効いたガットギターのサウンドが心地いい。この曲は2022年のラテングラミー賞で最優秀楽曲賞(Song Of The Year)を獲得している。

ラテングラミー賞の“Song of the Year”に輝いた(4)「Tocarte」。

今作中でも特に異彩を放つ(6)「¡Oh, Algoritmo!」はWeezerとのコラボでも話題のイスラエルの若手SSW、ノガ・エレズ(Noga Erez)をフィーチュア。彼女のパートナー、オリ・ロウソ(Ori Rousso)も制作に参加し本作のハイライトとなるような斬新なサウンドを展開する。

(5)「Tinta y Tiempo」

(9)「Bendito Desconcierto」はこちらもウルグアイを代表するSSWマルティン・ブスカグリア(Martín Buscaglia)との共作共演となっており、洗練されたポップスが印象的だ。

ウルグアイ人として初めてアカデミー賞を受賞したJorge Drexler

ホルヘ・ドレクスレルは1964年ウルグアイの首都モンテビデオ生まれ。カンドンベやムルガ、ミロンガといったウルグアイの伝統音楽にボサノヴァ、ポップ・ミュージック、ジャズ、電子音楽等を組み合わせたオリジナリティのあるサウンドと柔らかな歌唱力が特長で、彼が作曲し歌った「Al Otro Lado del Río(川を渡って木立の中へ)」はチェ・ゲバラの医学生時代を描いた映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』にエンディング・テーマとして採用され、アカデミー歌曲賞(Academy Award for Best Original Song)を受賞した。これはウルグアイ人として初めての栄誉となったが、アカデミー賞の授賞式では知名度不足と判断されアントニオ・バンデラスとカルロス・サンタナによって同曲が歌われることとなり、これに対抗したドレクスレルはオスカー賞授賞式の際、スピーチの代わりに同曲の一部をアカペラで歌いあげ意趣返しを行ったというエピソードがある。

彼の家族はユダヤ系で、ドレクスレル一家はナチス・ドイツによるホロコーストから逃れる為にウルグアイへと移住している。ホルヘも1年間イスラエルに住んだことがあり、ヘブライ語を流暢に話すことができる。

(3)「Cinturón Blanco」

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