ここはアフリカそれとも北欧?コラとトランペットが奏でる限りなく透明で美しい幽玄の音楽

Dawda Jobarteh - Do You Know a Place Called Flekkeroy?

ガンビア出身デンマーク在住のコラ奏者ダウダ・ジョバルテ新譜

西アフリカ・ガンビアのグリオの家系を継ぐコラ奏者ダウダ・ジョバルテ(Dawda Jobarteh)の最新作『Do You Know a Place Called Flekkeroy?』は、ノルウェーのトランペット奏者グンナー・ハレ(Gunnar Halle)を大々的にフィーチュアした北欧とアフリカそれぞれの叙情性が見事にマッチした稀有な作品だ。

アルバムは(1)「Do You Know a Place Called Flekkeroy?」で幕を開ける。はっきりとしたコード感、透明感の高いコラの音色、少し掠れたトランペット、残響音など西アフリカよりも北欧のジャズの要素がかなり色濃く現れており、コラもまるでグランドハープのような響きがとても印象的だ。彼が「その場所を知ってる?」と聞くフレッケロイ(Flekkerøy)とはノルウェーの美しい島で、ダウダの憧憬の地でもある。

(1)「Do You Know a Place Called Flekkeroy?」

(2)「Mbasi Got Lost in the Woods」ではグンナー・ハレの咽ぶようなトランペットとダウダ・ジョバルテのヴォーカルが故郷ガンビアへの郷愁を呼び覚ますが、コラのアルペジオがどこまでも美しい(4)「Moccahouse」や北欧の澄みわたる冬の空気を感じさせる(7)「Winter Trees Standing Sleeping」などはコラがアフリカの楽器であることを忘れるほどに北ヨーロッパ的な曲調に馴染んでおり、新鮮で不思議な感覚にさせてくれる。

(7)「Winter Trees Standing Sleeping」のソロ演奏動画(アルバム収録版とは異なる)

ドン・チェリーの(6)「Togo」、セロニアス・モンクの(8)「Jackie-ing」以外はダウダ・ジョバルテのオリジナル。アルバムにはガンビアの打楽器奏者サル・ディッバ(Sal Dibba)、デンマークのドラムス奏者ステファン・パスボルグ(Stefan Pasborg)、そしてマリのベース奏者エリゼー・サンガレ(Elisée Sangare)が参加し幽玄なサウンドを支えている。

Dawda Jobarteh プロフィール

コラ奏者/作曲家のダウダ・ジョバルテは西アフリカ、セネガルに囲まれた国ガンビア共和国に1976年に生まれた。家族は代々グリオ(西アフリカの世襲制の音楽家)で、アルハジ・バイ・コンテ(Alhaji Bai Konte, 1973年のニューポート・ジャズ・フェスティバルで演奏し、ソリストとして米国で演奏やツアーを行った初のコラ奏者)を祖父に、アマドゥ・バンサン・ジョバルテ(Amadu Bansang Jobarteh)を父に持ち、グリオの家系で初の女性コラ奏者であるソナ・ジョバルテ(Sona Jobarteh)は姪にあたる。

7歳でドラムスを始め、コラは12歳の頃に自ら志願して叔父のマラミン・ジョバルテ(Malamin Jobarteh)から習った。その後10代の頃には従兄弟のパ・ボボ・ジョバルテ(Pa Bobo Jobarteh)やタタ・ディンディン・ジョバルテ(Tata Dindin Jobarteh)と共にバンドを組み演奏活動を開始。デンマークのギタリスト、ピエール・ドゥルジュ(Pierre Dørge)は彼の才能に惚れ込み、自身のビッグバンドThe Jungle Orchestra にも招き入れられた。

1999年にデンマークに移住し、現在もそこで活動。西アフリカの伝統音楽に西洋音楽などの影響を加えた独自の現代的な音楽を追求している。

Dawda Jobarteh – kora, vocal
Gunnar Halle – trumpet
Sal Dibba – percussion
Stefan Pasborg – drums
Elisée Sangare – bass

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