現代Jazz、HipHop、イスラム神秘主義の驚くべき融合。Sélébéyone 2ndアルバム『Xaybu』

Steve Lehman - Xaybu: The Unseen

スティーヴ・リーマン率いる4人組 Sélébéyone による驚異の新作

米国の気鋭サックス奏者/作曲家スティーヴ・リーマン(Steve Lehman)が率いるジャズ・ヒップホップ・コレクティヴ Sélébéyone の2ndアルバム『Xaybu: The Unseen』。現代ジャズとラップやスポークン・ワード、そして西アフリカ音楽やスーフィズムとの実験的だが完成された融合が驚くべき結果を生んだ壮大な作品となっている。

「交差」を意味するウォロフ語(セネガル、ガンビア、モーリタニアにかけて住むウォロフ族の言語)のグループ名を持つSélébéyoneは、2016年に結成された。生演奏だけでなく電子音楽や打ち込みの可能性を早い時期から探究してきたサックス奏者のスティーヴ・リーマンと、長年の交友関係を持つAnti-Pop Consortiumの創設メンバーであるHPrizm(別名High Priest)、さらにリーマンの教え子でもあるフランスのサックス奏者マシーク・ラセール(Maciek Lasserre)とラセールが紹介したフランス在住セネガル人ラッパーのガストン・バンディミック(Gaston Bandimic)の4人によるプロジェクトで、2016年にデビュー作『Sélébéyone』をリリースしている。

Sélébéyoneのメンバーにこそ名を連ねてはいないものの、カリフォルニア州出身のドラマー、ダミオン・リード(Damion Reid)の存在も強烈なインパクトを放つ。グレッグ・オズビーやロバート・グラスパー、ラヴィ・コルトレーンらとの共演で知られる彼が叩き出す一筋縄ではいかないリズムがシンセベースと絡み、英語とウォルフ語のラップが乗り、アルトとソプラノの2本のサックスが空間を自由に舞う。4拍子に囚われないリズムやコードに縛られないソロも随所で炸裂し、ラップと絡みながらサウンドを昇華させていく様相はエレクトリック・フリージャズの進化形とも呼べるかもしれない。

面白いところでは日本の雅楽をモチーフとしたその名も(6)「Gagaku」というトラック。笙などの和楽器の音が響き渡り、さらにドラムスにラップやスポークン・ワードやサックスが乗り、みやびというよりはカオスなのだが、この混沌こそが現代の日本の都市の姿のような印象を受けなくもない。

雅楽をモチーフとした(6)「Gagaku」

アルバムタイトルのウォルフ語「Xaybu」はイスラム神秘主義における“見ることも触れることもできないもの”を意味する。HPrizm、マシーク・ラセール、ガストン・バンディミックはいずれもイスラム教徒で、未知なるものへの畏敬の念は、グループの創立以来、彼らの大切な音楽觀の基礎となっている。

Steve Lehman – alto saxophone
Maciek Lasserre – soprano saxophone
Gaston Bandimic – vocals (Wolof)
HPrizm – vocals (English)
Damion Reid – drums

Steve Lehman - Xaybu: The Unseen
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