イタリア・サレント出身の女性SSWラケーレ・アンドリオーリ、新鮮な伝統音楽で魅せる新作

Rachele Andrioli - Leuca

イタリアのSSWラケーレ・アンドリオーリ新作

イタリアのシンガーソングライター/打楽器奏者、ラケーレ・アンドリオーリ(Rachele Andrioli)の新作『Leuca』は、南イタリア・サレント地方の伝統的な音楽と現代的な洗練の完璧な融合だ。ラケーレ・アンドリオーリの強靭な意志を感じさせる歌声、地中海の打楽器、女性コーラスグループCoro a Coroの重厚な響きの合唱、そして名手レディ・アサ(Redi Hasa)の美しいチェロのアレンジも魔法のように折り重なり、個性的かつ素晴らしい作品に仕上がっている。

口琴の強烈なサウンドで目覚める(1)「Te spettu」はベースから高音まで多重録音されたレディ・アサのチェロ、ラケーレ・アンドリオーリによるパーカッション、幾重にも重なるCoro a Coroのコーラスなどで今作の刺激的なイントロダクションとなる。

(2)「L’amareggiata」にはギタリストであり本作の録音エンジニアでもあるヴァレリオ・ダニエレ(Valerio Daniele)がギターで参加。(3)「Preghiera del capo」は冒頭からのラケーレ・アンドリオーリ自身によるホーミー(倍音唱法)が印象的な楽曲で、倍音唱法の基音がドローン(持続低音)となり絶え間なく響く。タイトルの“首長の祈り”の意味どおりにスピリチュアルだ。

MVも公開されている最初のシングル(4)「Fimmana de mare」は今作のハイライトとなる1曲で、プリミティヴなパーカッション、トランス効果をもたらすミニマルな構成、ヴォーカルとコーラスの美しい響きなどが特長。

(4)「Fimmana de mare」

(5)「Luna otrantina」はダニエレ・デュランテ(Daniele Durante)とカテリナ・デュランテ(Caterina Durante)の共作曲のカヴァーだ。舟唄のようなムードが美しい曲で、レディ・アサのチェロが効果的。曲調も多くの曲がワンコードで力強く進行する本作の中では起伏に富み、耳に残る異彩を放つ。

タイトル曲(7)「Leuca」はラケーレ・アンドリオーリひとりの声による多重録音。祈るように抑制された声が神秘的。
Coro a Coroによるコーラスとハンドクラップや打楽器をフィーチュアした(9)「Mast Qalander」はパキスタンの音楽家、ヌスラット・ファテ・アリ・カーン(Nusrat Fateh Ali Khan)の楽曲のカヴァー。彼女はここではダラブッカを叩き、よりアラビックな雰囲気を醸し出している。

(10)「Manifiesto」は南米チリのヌエバ・カンシオンのスター、ビクトル・ハラ(Victor Jara)の名曲のカヴァーだ。ここでは再びナイロン弦のギターが伴奏に登場し、ラケーレ・アンドリオーリは情感豊かに(原曲のスペイン語ではなく)イタリア語で歌い上げている。

(1)「Te spettu」

アルバムは全編、ポジティヴな生命力に満ちている。
サレント半島最南端のサンタ・マリア・ディ・レウカの岬で生まれ育った彼女が子どもの頃から魅せられていたという伝統音楽の野性味が、この時代の音で再構築された独創的な傑作である。

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