チリの歌手フランチェスカ・アンカローラ、声とギターの新譜
チリ出身の歌手フランチェスカ・アンカローラ(Francesca Ancarola)とアルゼンチンのギター奏者オラシオ・ブルゴス(Horacio Burgos)の共演作『Cartas de Amor』。これぞ南米の声とギターのデュオという温かく美しい音が素敵な作品だ。半数以上の曲ではパーカッションのルイス・バルエト(Luis Barrueto)も参加し色彩を添える。
収録曲はアルゼンチンの作曲家グスタボ・レギサモン(Gustavo Leguizamon, 1917 – 2000)と、その盟友であり詩人マヌエル・J・カスティーリャ(Manuel J. Castilla, 1918 – 1980)のコンビが遺した古いサンバ(zamba)やチャカレラの歌曲が多く、全11曲中8曲を占める。今作でギターを爪弾くオラシオ・ブルゴスはレギサモン自身ともかつて音楽活動を行なっていたベテランで、絶妙なハーモナイズなど機微な変化をこれらの楽曲に加えた見事な解釈を披露。そのギターを受けて歌うフランチェスカ・アンカローラのヴォーカルも時に繊細に、時に力強く伸びやかで、洗練された響きで古い歌曲を蘇らせている。
今作のプロセスの開始は2017年、フランチェスカのワークショップの生徒であったチェリスト/歌手のセリア・アイマン(Celia Eymann)から、グスタボ・レギサモンの生誕100周年を記念して作られた歌集をプレゼントされたことに始まる。幼い頃からサンバへの憧れがあったというフランチェスカは夢中になってこれらの曲を研究し、作詞家マヌエル J. カスティーリャの物語に散りばめられた登場人物の世界を探求したが、それらを充分に理解するには自分には何かが欠けていると感じていた。
2020年になって彼女はレギサモンの歌唱集会を計画し、山脈の反対側から民俗学の研究家であるシルビア・セルビーニ(Silvia Zerbini)を招いた。そのシルビアが連れてきたのがギタリストのオラシオ・ブルゴスで、1週間の集会が終わったあと、素晴らしいサンバの余韻が残っていた彼らは1日をかけてレコーディングを行った。(1)「Cartas de Amor Que Se Queman」などがデュオで演奏される曲がその時の録音で、これが非常にうまくいった彼らは2022年のはじめに打楽器奏者のルイス・バルエトを加えて新たな録音を行い、今作を完成させた。
Francesca Ancarola プロフィール
チリの現代フォルクローレを代表する歌手であるフランチェスカ・アンカローラ。
これまでに10枚以上のアルバムをリリースしており、うち3枚でチリの栄誉あるアルタゾール賞を受賞している。
フォルクローレとジャズの自然な融合を特長としており、これまでにチリ国内だけでなくアルゼンチンの巨匠カルロス・アギーレ、ウルグアイのウーゴ・ファトルーソ、日本の松田美緒などなど国境に縛られず共演者との活動を行い、活躍の場を広げている。
Francesca Ancarola – vocal
Horacio Burgos – guitar
Luis Barrueto – percussion