革新的・現代的ギタートリオ、Melt Trio の4thアルバム
ベルリンを拠点とするギタートリオ、メルト・トリオ(Melt Trio)。ギターのペーター・マイヤー(Peter Meyer)、ベースのベルンハルト・マイヤー(Bernhard Meyer)の兄弟と、ドラムスのモーリッツ・バウムガルトナー(Moritz Baumgärtner)によって2010年に結成されたこの刺激的なトリオは、2011年のデビュー作『Melt』以来、徐々にその人気を拡大してきた。ジャズと、プログレッシヴ・ロックの感触、控えめだが効果的なエレクトロニックを用いる彼らの音楽はバッド・プラス(The Bad Plus)やクルアンビン(Khruangbin)とも比較される。
2022年11月にリリースされた彼らの4thアルバム『Consumer』は、ドイツの現行ジャズシーンの中でも際立つ、まさしく“今の音”で構成された作品であり、彼らが追求する音楽の集大成的な高い完成度も誇る。アルバム全編でのダスティに歪むギターは最高にかっこいいし、(2)「Item 4」の実験的な構成、キャッチーなメロディを持った高揚感のある(3)「Strategy Song」、前衛的なエレクトロニック・ジャズの(4)「Elysian Minor」などなど、どれも芸術点の高いロック精神に溢れるジャズだ。
メンバー全員がベルリン・ジャズ・インスティテュートの卒業生。有機的なグルーヴと電化されたサウンドの融合はマイルス・デイヴィス(Miles Davis)の『On the Corner』(1972年)を彷彿させる瞬間も。
それを思うと、革新的なギタートリオと評論されるMelt Trioもここ半世紀ほど普遍的にかっこいいとされる音をうまく取り入れつつ、未来へと橋渡しをする存在のように思えなくもない。
どことなくアイロニカルなニュアンスを感じさせるアルバム名も含め、とても面白い作品だ。
Melt Trio :
Peter Meyer – guitar, electronics
Bernhard Meyer – bass
Moritz Baumgärtner – drums