キューバ、ブラジル、NYジャズシーンの饗宴。ダフニス・プリエトの曲者揃いのカルテット作

Dafnis Prieto - Cantar

キューバ出身打楽器奏者、ダフニス・プリエト新作『Cantar』

キューバのドラマー、ダフニス・プリエト(Dafnis Prieto)がブラジル出身の歌手ルシアーナ・ソウザ(Luciana Souza)を全面的に迎えて制作した新作『Cantar』は、所謂“ラテン音楽”として認知されるキューバの音楽と、ルシアーナがもたらすブラジル音楽のエッセンスを絶妙にブレンドした新しい視点の作品だ。

ダフニス・プリエトが叩き出すグルーヴは基本的にラテンのそれだが、ルシアーナ・ソウザの歌唱はブラジル的な抑制が効いており、ダフニスとルシアーナの共作による(3)「Houve um Tempo」などはブラジル北東部の音楽の要素なども大胆に取り入れ、歌詞もポルトガル語で歌われるなど今作の無国籍で洗練された印象に拍車をかけている。

ブラジル北東部(ノルデスチ)音楽の要素を取り込んだ(3)「Houve um Tempo」。

参加する他のミュージシャンも曲者揃いだ。
米国出身のアヴァンギャルド・ジャズで知られるマルチ奏者(木管楽器、シンセ/キーボード、打楽器)ピーター・アプフェルバウム(Peter Apfelbaum)は特に象徴的で、(1)「Guajira en Sol」でのソロのぶっ壊れたハーモニーなど、衝撃的ですらある。このソロはピアノのキューバ出身マーティン・ベヘラーノ(Martin Bejerano)と交互に掛け合う構成で、ギリギリを攻め続けるピーター・アプフェルバウムのソロに呼応してマーティン・ベヘラーノも徐々にヒートアップしていく様が最高に面白い。

中盤からのソロも熱い(1)「Guajira en Sol」。ピーター・アプフェルバウムの左手は特にやばい。

そしてベースは知る人ぞ知る鬼才マット・ブリューワー(Matt Brewer)。最近ではロシア出身の天才ギタリスト、エフゲニー・ポボシー(Evgeny Pobozhiy)のデビュー作への参加や、アルメニアの世界的ピアニスト、ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)の『StandArt』(2022年)への参加など、世界規模のジャズのシーンに欠かせない存在となっている彼がエレクトリック・ベースとダブルベースで支える低音は、あまりソロも取らず地味だが随所で創造的かつ堅実なプレイを見せ、アルバム全体の完成度を底上げする。

ダフニス・プリエトとルシアーナ・ソウザの共作曲(9)「The Muse」

Dafnis Prieto プロフィール

ドラマーで今作のほとんどを単独で作曲したダフニス・プリエトは1974年キューバ・サンタクララ生まれ。幼少時からパーカッションとギターを学び、10代後半でハバナの国立音楽学校に移りクラシック音楽やアフロ・キューバン音楽を専門的に学んだ。
1999年にニューヨーク市に移り、そこでエディ・パルミエリ(Eddie Palmieri)、カルロス・バルボサ・リマ(Carlos Barbosa-Lima)、アルトゥーロ・オファリル(Arturo O’Farrill)、ミシェル・カミロ(Michel Camilo)などと仕事を共にし、2015年以降はマイアミ大学フロスト音楽校で教鞭を取りながら自身の音楽活動を続けている。

Luciana Souza プロフィール

ヴォーカリスト/作曲家ルシアーナ・ソウザは1966年ブラジル・サンパウロ生まれ。父親も音楽家、母親は詩人という一家に生まれ幼少期から音楽に親しみ、最初は3歳の頃にラジオのコマーシャルでキャリアをスタートさせたという。
米国ボストンのバークリー音楽大学でジャズの作曲の学士号を取得し、そこで4年間教官も務めた。

グラミー賞を受賞したハービー・ハンコックの作品『River: The Joni Letters』で(8)「Amelia」を歌うなど、数多くのレコーディングに参加。
歌手としての活動だけでなく、マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、カナダのヨーク大学、スイスのバーゼルにある音楽アカデミーで教鞭をとるなど後進の育成でも活躍している。

Dafnis Prieto – drums, percussion, vocals
Luciana Souza – vocals, percussion
Peter Apfelbaum – woodwinds, melodica, percussion, keyboards
Martin Bejerano – piano
Matt Brewer – contrabass, electric bass

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