魅惑のターキッシュ・フュージョン。ピアニスト/作曲家ネヴザット・ユルマズ3rd『Ruşeym Project』

Nevzat Yılmaz - Ruşeym Project

Nevzat Yılmaz、魅惑のターキッシュ・フュージョン

トルコのピアニスト/作曲家ネヴザット・ユルマズ(Nevzat Yılmaz)の3rdアルバム『Ruşeym Project』は、伝統的な音楽と西洋のジャズやフュージョンが融合し独自の発展を見せる現代のターキッシュ・ジャズ・フュージョンをたっぷりと堪能できる濃密な作品だ。ピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションのカルテットをメインに数曲でヴォーカルも参加する。

(1)「Black Mountains」

(2)「Kekinowin」は北米のネイティヴ・アメリカンのシャーマンが用いる表意文字のこと。この一部の限られた者だけが扱える文字は歴史や経験に基づく壮大な物語、歌や踊りといったインディアンの文化をシャーマン自身が思い出し伝えるためのもので、コミュニケーションに用いられることはないのだという。ネヴザット・ユルマズはここでは瞑想的なリズムとアコーディオンの旋律による前半と、繰り返されるベースラインの上でのピアノの即興が徐々にトランス状態に誘う中盤、そして再び瞑想に浸る終盤という構成で神秘的な音を紡いでゆく。

ハーバード大学の教授でトルコの歴史研究家のジェマル・カファダル(Cemal Kafadar)の著書に触発されたという(4)「Between Two Worlds」は今作のハイライトのひとつだろう。アナトリアの伝説的な二人の詩人──13世紀に生きたユヌス・エムレ(Yunus Emre)と17世紀のカラカオラン(Karacaoğlan)──の当時の思想を音楽で表現した楽曲で、抑揚のあるテクニカルな作編曲と演奏が印象的な仕上がりとなっている。

女性歌手ヌーセル・ムク(Nursel Mucu)のヴォーカルも今作の魅力のひとつ。伝統的な歌唱法に大きく影響を受けた特徴ある伸びやかな声が印象的で、アルバムに深みをもたらしている。

Nevzat Yılmaz 略歴

ネヴザット・ユルマズは1960年トルコ・イスタンブール生まれのピアニスト/作曲家/プロデューサー/俳優。演劇で俳優としてのキャリアを始め、2000年代以降は映画やテレビ番組などに出演したり、作曲家や音楽プロデューサーを務めたりと才能を発揮している。

Nevzat Yılmaz – piano
Erhan Ertetik – bass
Ersin Gülseli – drums
Nursel Mucu – vocal
Abbas Karaca – percussion

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