アルバ・アルメンゴウ、SAJB卒業後初のソロ・アルバム
2001年生まれの彼女もまた、サン・アンドレウ・ジャズバンド出身で、ジョアン・チャモロの傍を離れてアーティストとしての新しい道を歩み始めたスペインの将来を嘱望される新世代の音楽家だ。
名はアルバ・アルメンゴウ(Alba Armengou)。
サン・アンドレウ・ジャズバンド(SAJB)の最初のスターであるアンドレア・モティスの後継的な存在だった彼女は、同バンド所属時代にはフロントとして2014年の『Joan Chamorro Presenta Alba Armengou』を皮切りに数枚の作品をリリースし喝采を浴びたが、この度ついにバンドを卒業して初めてのソロ作である『Susurros del Viento』をリリースするに至った。
アルバムの多くの曲はギタリストのビセンテ・ロペス(Vicente López)とアルバ・アルメンゴウの共作。サン・アンドレス・ジャズバンドでの音楽性がそうであったように、全体的な色彩感はジャズ、カタルーニャの音楽、ブラジルの音楽などの自然な融合が感じられるものだ。
アルバ・アルメンゴウはカタロニア音楽大学(ESMUC)で学び始めた2019年にビセンテ・ロペスと出会った。彼と一緒に曲を書き始めたのは約1年前からで、アイディアやメロディー、ハーモニーを共有しながら、あらゆる音楽からインスピレーションを受けた内なる音楽の旅路を楽しんだという。
ゆったりとしたラテン調の(1)「Susurros del viento」から、彼女の穏やかで美しい内面性が表れている。クインテットで演奏される音楽はアルバ・アルメンゴウのヴォーカル、トランペットのソロが目立つが、サックスのジョアン・マルティ(Joan Martí)──アルバは8歳のときにサン・アンドレウ・ジャズバンドで彼と出会っている、いわば幼馴染だ──の歌にぴったりと寄り添うような演奏も地味ながら素晴らしい。
リラックスと眠りに誘うようなラストの(6)「Luna」もまた、うっとりするほど素晴らしい。
カヴァー曲は2曲。
(4)「Fato Consumado」はブラジルのシンガーソングライター、ジャヴァン(Djavan)の曲で、歌詞も原語であるポルトガル語で歌われる。ジャヴァン特有のグルーヴィーな世界観を残しつつ、アコースティック主体の軽やかなサウンドでのアレンジは今作の中でも異彩を放つ。
(5)「La Gavina」はカタルーニャの作曲家フレデリック・シレス・プーチ(Frederic Sirés Puig, 1898 – 1971)による楽曲のカヴァーで、通常はハバネラのリズムで演奏されることが多いが、ここでは現代的なジャズ・アレンジが施されている。
Alba Armengou プロフィール
バルセロナ出身のアルバ・アルメンゴウは8歳のときにサン・アンドレウ・ジャズバンドに加入し、すぐに頭角を表した(ちなみに彼女の妹であるエルサ・アルメンゴウ(Elsa Armengou)もまた、SAJB史上最年少の6歳でソリストとして演奏し話題となった)。
13歳のとき、ブラジル音楽を多数取り上げたデビュー盤『Joan Chamorro Presenta Alba Armengou』(2014年)でデビュー。以降、6歳年上で一足先に国際的なスターとなったトランペット奏者/歌手アンドレア・モティス(Andrea Motis)の後継としてSAJBの“顔”となり活動を続けてきた。
メインの楽器はトランペットだが、アンドレア・モティス同様にサックスの演奏でも非凡な才能を見せる。
今作『Susurros del Viento』は、すでに人生の2/3を音楽に捧げてきた22歳の若者による、新章の幕開けを告げる最高のアルバムだ。
Alba Armengou – vocal, trumpet
Vicente Lopez – guitars
Joan Martí – saxophone, flute
Giuseppe Campisi – double bass, electric bass
Enric Fuster – drums
Tramel Levalle – percussions