オメル・クライン、トリオ結成10周年を祝う新作『Life & Fire』
イスラエルを代表するピアニストのひとり、オメル・クライン(Omer Klein)の最新作『Life & Fire』は、気心の知れた二人の奏者──ベースのハガイ・コーエン・ミロ(Haggai Cohen-Milo)とドラムスのアミール・ブレスラー(Amir Bresler)──との共同名義のピアノトリオ作品だ。
今作はこの3人での録音は通算5作目であり、トリオ結成10周年を記念する作品でもある。
イスラエル生まれの3人による楽曲と即興演奏はユダヤの民族音楽の要素を含む所謂“イスラエル・ジャズ”の範疇だが、オメル・クラインの両親のルーツである北アフリカや東ヨーロッパのエッセンス、そして彼らがこれまでの音楽体験で影響されてきたニューヨークのジャズ、ブラジルやラテンアメリカの音楽から得たインスピレーションも多分に含む。
スウィングするフォービート・ジャズ(2)「Song No 2」、インドの文化にインスパイアされた(3)「3/4 Mantra」、ユダヤの音楽文化を色濃く反映した(4)「Tzuri」や(7)「Niggun」など、収録された楽曲はそれぞれ異なる魅力的な表情を持っている。
作曲はすべてオメル・クラインで、彼はトリオの10周年を記念するに相応しいアルバムとするために次の3つの方針を打ち出した:
- 楽しいものであること。
- 生誕祭なのだから、友人を巻き込むこと。
- 記念日を祝うには、過去に敬意を払い、未来へと繋げる新鮮な方法を見つけること。
そうして彼は、ヘッドフォンをせずに全員が同じ空間でレコーディングできる小さなスタジオに入ることにし、多くの友人たちを呼んで、彼らに囲まれながらレコーディングを行った。その模様はYouTubeで公開されているミュージック・ヴィデオで観ることができる。
(7)「Niggun」の曲名“ニグン”はヘブライ語で“旋律”または“曲”を意味し、ユダヤ教の伝統的な音楽の旋律のことを指す。伝統を基調としながらも大胆にジャズの概念を取り込み、繊細な感性で表現される演奏は最高に美しく、エキサイティングで楽しい。
Omel Klein プロフィール
オメル・クラインは 1982 年にイスラエルで生まれ、テルアビブの北へ30kmにあるネタニアで育った。両親はイスラエル生まれで、オメルはチュニジア、リビア、ハンガリーからの移民の孫だ。
5歳で鍵盤楽器を演奏し始め、13歳でピアノの演奏を開始。幼い頃から作曲と即興演奏に興味を持ち、イスラエルを代表する芸術学校であるテルマ・イェリン芸術高校で学んだ後、ボストンのニューイングランド音楽院から奨学金を得て渡米。2005年にニューヨークに移り、フレッド・ハーシュ(Fred Hersch)に師事した。
2009年より活動の拠点をドイツ・フランクフルトに移している。
妻はドイツの女優ヴィオラ・ポビッチカ(Viola Pobitschka)。
Omer Klein – piano
Haggai Cohen-Milo – double bass
Amir Bresler – drums